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ダブルマチュワード-Sherry1

DOUBLE MATURED – SHERRY

前書き

第一章 First Order ファーストオーダー

 会社を出たのが6時ちょうどだった。
先週くらいから寒さはピークって感じで雪もよく降るようになっていた。
僕はコートの襟を立てて寒さをこらえながら人ごみを歩いていた。

今夜は彼女と待ち合わせをしている。
僕から「逢いたい」といって約束をした。
23時に「エンドスケープ」で!

お互いの仕事の終わる時間に余裕を持っての事だったが、それとは別に
少し気持ちの整理をする時間が必要だった。

彼女と付き合いだしてもうすぐ4年になる。僕も32歳になり、仕事も安定してきた。
そろそろ次のステップを求めてもいい時期かなと思い始めていた。

待ち合わせは西麻布、俺は渋谷駅を超え六本木通り面したバーに向かっていた。
そこで一杯飲んでからタクシーで行けばいいと思っていた。

その店は仕事帰りにちょくちょく立ち寄るバー「ストーンフラワー」だった。
バーテンダーは世界チャンピオンというお店だった。

「いらっしゃいませ」

店内は6時過ぎだと言うのにかなり賑っていた。
マスターがカウンターの空いてる席に誘導した。

「こんばんは」

「竹原さん、今日はお早いですね。」

オーナーバーテンダーの西垣さんがいつもながらにきっちりとしたベストに
ネクタイ姿で前に立った。

「今夜はこのあとに大仕事があるので少し早めにここでリラックスしようと思いまして」

西垣さんは笑顔で何かを察してくれた感じだった。
僕はスコッチハイボールを注文した。
ビールが苦手な僕の一杯目はこれに決めていた。

小さく細かい泡が無数に上がっていくのを見ると、何だか心が落ち着いた。

僕がバーに来るようになったのは、大学2回生の頃だった。
居酒屋しか知らなかった頃、同級生にちょっと大人びた奴がいて初めて連れて行ってもらった。
普段の自分には無い世界がそこには広がっていた。
少し憧れはあったのでそれからはバーにはまった。

「今宵はXデーって感じですか?」

「そのつもりなんですが・・・」

「ゆっくり気持ちを整理していってくださいね。」

バーに来る理由、お酒を飲みに来るのはもちろんだけど、気持ちの切り替えや、
悩みの解消の糸口を見つけになど色々ある。

僕と彼女の4年あまりが詰まったバー。その店がバー「エンドスケープ」だった。

思い出の詰まったお店で結論を出すつもりだった。

#NH

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