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ダブルマチュワード-Sherry3

第2章 Second Order セカンドオーダー

二杯目にバルベニー12年を注文した。
何かお腹に入れようと思ったが、あまり食欲もなく迷った末にテールスープを頼んだ。

「ダブルマチュワードですか?シェリーとポートの様な関係になれたらいいですね」

マスターはそう言うと綺麗にカットされた氷が入った琥珀色に輝くグラスを差し出した。
ダブルマチュワード、熟成の最後に違う樽で寝かせるお酒の作り方。
複雑に絡み合う最初の樽の風味と最後の樽の風味、それが他にない一杯の味を生む。
僕の今までの人生と彼女の今までの人生、上手く絡み合って1つになれるだろうか?

「マスターは・・・いや、いいです」

言いかけてやめた。

「まじめに誠実に、それが私のモットーです。」

マスターには僕の気持ちを見透かされているみたいだった。
グラスの琥珀色は複雑さを増しているみたいだった。

パリでの最後の夜はバーで締めようと思っていた。

「何処に行きますか?」
「ホテルを出たちょっと先に古くからやっているバーがあるのでそこへでも行きましょうか」

二人でサンジェルマンの街を歩き出した。
少し肌寒い感はあったが、ワインで火照った身体には心地よく思えた。
そのバーは古めかしい木の扉が凄く似合う外観だった。
中に入ると多くの地元の人たちが飲んでいた。
僕たちはテーブル席に座った。

「何を飲みますか?」
「シャンパンが飲みたいです。」

僕はバーテンダーにグラスシャンパンを2杯オーダーした。

「このツアーはどうでしたか?」
「思ったより楽しかったです。正直に言うとウィスキーの蒸留所ってあまり興味は無かったけど、
そこにロンドン、パリって面白いかもって参加したんです」
「楽しかったと言ってもらえて幸いです。」

二人のテーブルにシャンパンが運ばれてきた。銘柄はテタンジェだった。
彼女はシャンパン好きみたいで美味しそうに飲んでいた。

「竹原さんは何がお好きなんですか?」
「お酒は全般好きです。大学の時にバーにはまってしまって、お酒好きというより
バー好きですかね」

彼女がこんな表情が豊だったんだと思いながら話をした。

「でも、お一人での参加というのは勇気ありますね。」

彼女は少し戸惑う感じでうつむいた。
気まずさに次のオーダーをした。二杯目はサンジェルマンにした。

「サンジェルマンって何ですか?」

僕は話を変えるべくサンジェルマンの説明をした。

「へぇ~、ジンベースですか」
「僕はジンベースのカクテルが好きなもので」
その後はお互いどちらからともなく自分のことを話し始めた。

僕が恋愛映画好きで「ノッティングヒルの恋人」ファンだったのでロンドンでは
ノッティングヒルにホテルをとった事や、根っからのサッカー馬鹿だと言う事。
彼女は別れた彼氏を忘れるための海外旅行だった事や実は甘えん坊だということ。
時間はあっと言う間に過ぎた。

バーの雰囲気もよく、それが時間の感覚を鈍らせたのか、会話に夢中になったのかはわからない。

「時間も時間だし、最後に一杯飲んで帰りましょうか?」
「最後は何にしますか?」

二人は悩んだ。

「そうだ、お互いの好きな物でカクテル創ってもらいましょうか」
「それいいかも?じゃぁ、私はシャンパンで」
「僕はジンで!」

バーテンダーにそのむねを伝えた。
お互いワクワクしながらカクテルが出てくるのを待った。
数分後、テーブルに運ばれてきたカクテルはシャンパンかと思う外見だった。

「フレンチ75だって?」

お互い半信半疑で口をつけた。

「おいしい」
「ホントに、ジンが効いてる」

最後のカクテルが思わぬ物で二人は感動した。
まさに女性的なカクテルのネーミングだが、実は大砲の口径の事だと後で知った。
でも、二人にとってサンジェルマンで飲んだ「フレンチ75」は思い出の一杯になった。
僕は彼女に何だか暖かい気持ちを感じていた。

#NH

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