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■虎杖浜の短い夏 


旅の途中、温泉宿の近くの浜辺にいた。
夏休みの親子が、波と鬼ごっこをしている。

雲間から光が射して、海が輝き始めると、
さっきまで逃げ惑っていた子供たちは、
もうすっかり波に馴染んでいる。

光る海辺には、少女たちもあらわれ、
親子を真似るように、波と鬼ごっこを始めるのだった。

砂浜に腰を下ろすと、紙切れが纏い付いてきた。

  あんちゃんとしんちゃんへ
  ――冬休みにやせてもどってくるZE♡♡。
  ――ああ、あとかれし作る。
  ――たのしみにしてろよ ―――。   ○○より。

稚拙な文字のカタチから、
都会で一人暮らしをしているわが子を、思い浮かべて、
ぼんやり遠い水平線を眺めていた。

・・・紙切れは、いつしか風が攫って、
波間に漂いはじめていた。

#■HOKKAIDO

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