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■追憶の「グレングラント10年」 

しばらくCLUBへもご無沙汰していましたが、
今夜は新会員への引継ぎ紹介も兼ねて、
理事長からデンワで召集があったのでした。

――例の「GLEN GRANT10年」クラブへ持ってゆくから。
それは八月の暑い最中、函館行の列車の中で受けたデンワのボトルなのです。
それから三ヶ月が過ぎて、
ようやくクラブのミズナラカウンターにデンと置かれたそのボトは、
スクリューキャップを覆うシールの上に、さらに厳重なパッキンが施こされ、見るからに保存状態も確かで、ボトルへ寄せる丁寧な「思い」が伝わってくるのでした。
――うーーん。いい仕事していますねえ。
逸る思いとは裏腹に、慎重な開栓に手間取って、
しかし開封されると同時に、周囲はあの独特な、フルーティな香りと麦の香りの入り混じった、暖かな雰囲気に包まれてゆくのでした。
――これこれ、これだよね。
風に靡いて黄金色に輝く麦畑に迷い込んだような豊穣の香り。

そんな事を思いながら、記憶の中のGLEN GRANTが、次々と蘇ります。

グレングラントといえば、ボローニヤ出身のインデペンデントボトラー・サマローリ氏のボル。また、ボトルシールでもおなじみのグラント兄弟の描かれた、ゴードン&マクファイルの長期熟成ボトル・・・。
だがしかし、近年出回る手頃なボトルは、そのいずれもが、馥郁(ふくいく)たる暖かみに欠けるもので、そのこと気になって、イタリアの街角をうろついていた時でも、バールやリストランテの棚を眺めるたびに、GLEN GRANTは今どうなっているか・・・。
という思いが、アタマの片隅にあったのです。

おそらく、80年代はじめ頃に、流通していたと思われる、この角瓶・スクリューキャップが特性のボトルを手にして、
それは、アンティークのお宝を鑑定する気分で、
あらためてボトルの仔細を眺め回せば、

――うーーん。いい仕事していますねえ。

と、いまでは懐かしい、っかり厚手のスクリューキャップの細部ひとつをとっても、
感心してしまうのでした。


この春の60年代・ミラノGIOVINETTIの「マッカラン」に続いて、

今回のRené Briano S..A Milano GLEN GRANTは、長期熟成モノにはない、10年物ゆえのストレートなモルト特性が、そのまま、半世紀の時と場所を隔てて、CLUBの空気と戯れはじめ、暖かくその場を包み込みます。

そして、返しの喉元では、かすかですがしっかりと、まるで絵画のパースペクティブのようにグレングラント独特のあのドライな余韻を主張しているのでした。

 
――貴重だから飲んでしまう前に、写真を撮ってブログに書いておきましょう。

 

CLUBの皆様も一本限りですが、この貴重なワンショットを、是非、五感を集中させて味わってみてください。

#■MALT WHISKY

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