――そういう訳で、さっそく年賀状のプリントをはじめたのだ。
来年はトラ年か。
トラといえば大好きな、円山応挙の「虎図」を思い浮かべる。
数ある虎図のなかから選んで、
これがバイヤーのお気に入り。
円山応挙(1733-1795)の生きた時代は、
日本で言えば上田秋成・与謝蕪村・伊藤若冲と同世代だ。
西欧でも、この頃はスコットランド啓蒙の時代で、
ディヴィッド・ヒューム、アダム・スミスが生きて、
産業革命は起こり、アメリカの独立宣言が1776年だ。
・・・世界は現代へ向けて、急転換を始める。
ディヴィッド・ヒュームの「主観論」が、
後の世界に多大な影響を及ぼした一端については、
ウンベルト・エーコの「美の歴史」を引用して、
「美の歴史とシングルモルト」でも触れたが、
世界はコトバや習慣や風土を超えて、
やはり同時代の空気を呼吸しているのだなあと改めて実感する。
――それで、応挙先生の「虎」なのである。
この、張子のトラのような子虎ちゃんのインパクトとは何か。
それは、そのマナコにある。
一瞬、視点が合う虎の威厳。
でも、どこか引き付ける眼差し・・・。
もう少し、引き付けてご覧くだされ。
もう、お判り頂けたかと思うのですが。
・・・そうなんだよな。
トラ君のマナコは笑っているのです。
コレハ、まるで、アニメの眼差しであろうが。
だからバイヤーは、世界に名立たるニッポンアニメの原点は、
応挙先生にアリと実感しているのだ。
其処のところ、世間は一般に、円山応挙を観ていないよ。
その、洗練されデフォルメされた技の表現が、
われわれニッポン人の記憶に蓄積されているのじゃよ。
・・・応挙ってスゴイですよ。
――そんな訳で、年賀状一丁上がり。
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