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秩父蒸留所体験記3(転載)

 (前回に引き続き、本人の許可を得て転載します。)

ここで一度お昼休憩です。
食事は作業が済んだ人から順番に取るそうで、この時は、肥土さんと渡部さんと一緒に食事をとりました。話は自分が居る店、六本木Islay bar Tokyoと本店練馬Malt House ISLAYになり、現在は以前いた先輩スタッフ達も皆独立したのですよ、と説明しました。ちなみに中野駅にIさん モルトバーエステル、神保町にOさん バー247、新宿三丁目にFさん バー・ジン&イット、お近くに寄られた際はどうぞお立ち寄り下さい。

休憩が終わり渡部さんにウエアハウスとキルン塔を案内して頂きました。最初にウエアハウスです。現在秩父蒸留所ではダンネージ方式で熟成を進めていて合計89樽眠っています。

下の地面はむき出しで、熟成庫自体は、1から10までが、新樽のミズナラ樽、残りはバーボン樽、シェリー樽、ラム樽、パンチョン、ホグスヘッドでした。面白いのがバーボン樽はヘブンヒルの樽が多く目に付き、他はメーカーズマークもちらほらです。そして一番興奮したのがクリアデア表記の樽が4つありました。ボデガはゴンザレス・ピアス社との事です。どの樽もどんな味わいに仕上がるか非常に楽しみです。そして奥に東亜時代の今度ボトリングをする樽が眠っていていました。ここで一旦ウエアハウスを出てキルン塔へ。中はまだ何も無かったですが、2階の麦芽をひく所に通して頂き見上げると、屋根の部分から光が差していて、いつかキルン塔から煙を上げている姿を想像していると楽しくなりました。麦芽の搬入はフォークリフトを使い一気に2階に上げられるよう、色々と工夫が凝らしてありました。

そして、外に出た所で肥土さんが待っていて下さり、渡部さんは仕事に戻っていかれ再度ウエアハウスへ。

以前から同業者間から噂話として話されていた事を質問させて頂きました。

Q最近ニュースピリッツが非常に売れていますが、やはり、秩父も出されるのですか?
 A年内には考えています。 恐らく8月から9月だと思いますよ。

Q某S社がやっているようなオーナーズカスクは行なうのですか?
 Aこれも同じく8月下旬以降に蒸留をした物は視野に入れているのですよ。ただ、税金の関係や法律上のネックがあるので明確には値段、時期も何とも言えないですねとの事です。ただ、恐らく売りに出す樽の多くはバレルサイズです。他の樽だと樽自体が値段的にも結構高いですからねと言われていました。

そして片隅に何個か水色のドラム缶に似たプラスチックの容器があったので聞いた所、これはスコットランドの蒸留所から某ブレンデットを作るためにモルトを買った際に容器として入っていたのですよと言われ、スコットランドでは移動の際によく使われているとの事です。ちなみに何処かはヒントのみでした。ヒントはシーバス・リーガルのキーモルトと肥土さんの今までの行動を知っている方であれば分かると思います。

そして、熟成庫の特徴としては屋根が非常に高く、一番上の所に小窓が付いていました。熱は上にいくと言う理論から 暑い時期には上の窓をあけ、熱を逃がすために設置したとの事で 建物の高さの発想はボデガで得たそうです。

蒸留所自体は断熱材を一切使用せずにステンレス等を使用した感じの建物だったので、これも聞いた所、秩父で作っていて秩父の味わいを目指すために、あえて断熱材や空調設備等を設置しませんでした。そして、夢はオール埼玉の材料で蒸留をする事です。麦は、蒸留所の近くには小麦農家も多く、こうした農家に大麦を作ってもらうのが夢です。写真を後で見せて頂きましたが、立派な小麦畑でした。ピートは、飯能産の物を使い、蒸留所は秩父 ボトリングも秩父 まさにオール埼玉ですね。

蒸留釜がある建物に戻った所で渡部さんにスペント・リースを見させて頂きました。文章では知っていましたが初めてみるスペント・リースは黄土色で思ったより量が多かったのと独特の香りをしていました。

ボトリング設備のある部屋にいき、ボトリング最中の15yのお手伝いをさせて頂きました。

ボトリングは全て手作業で行なうため、最初に空瓶の洗浄です。自分が洗った瓶がいつか店頭に並ぶと思うと感無量で楽しく作業をすることが出来ました。そして渡部さんがラベルを貼りながら面白いことを教えて下さいました。「15yはこれで三度目のボトリングですが、ラベルに小さく鳩が書かれているのですよ。最初は1羽で2回目が2羽、今回は3羽描かれているのですよ。」と、是はコレクター達や飲み手側にも面白い情報だなと思いました。

そして、ボトル洗いが一段落した所で門間さんが呼びに来て下さり、ミリング工程を教えて頂きました。手順は最初に麦芽の異物チェックをして、それをエレベータに入れ、それが上にいきモルトミルで粉砕され落ちてきて、再度エレベータに乗りグリストをマッシュタンの上にあるグリストホッパーに貯めるとの事です。

ここでもビックリしたのがモルトスターから送られてきた麦芽には異物が混入をしている可能性が若干あるため、絶対チェックをするとの事です。自分が行った事がある蒸留所ではその作業は全て機械がやっていたのですが秩父では手作業でした。もちろん、異物と言っても石や穂の欠片が混じっているだけですが、一回の仕込みに使う量が400㎏とはいえ全て手作業で除去するのは、意外に骨が折れる作業だと思いました。粉の引き割り具合はH・G・F 2:7:1でこれはどこも一緒の事です。そして最後に正確に引き分けているかを調べるとの事です。途中、門間さんが面白い冗談を言っていました。「たまにコーンが一粒入っていたりするのですよ。何袋かに一粒とかの割合ですが、でも入っていたら出来上がるウィスキーはモルトウィスキーではなくグレーンウィスキーですよね。」と笑いながら。確かにと頷きながら探したのですが今回は入っていませんでした。そうそう、混じっている物でもないようです。そして、8袋目を過ぎた辺りで一度上の設置してある粉砕をしたグリストを貯めてある場所グリストホッパーに案内をして頂き、たまに粉を平らにしないとグリストが山状になるので機械が詰まる原因との事。ここからは2袋に一回ほど上にいきグリストを平らにして、また下に戻りモルトを粉砕するという作業の繰り返しでした。

この作業も終わり暫く蒸留所内を撮影してきました。途中から気が付いたのですがカメラを持って来たのに撮影をほぼしていなかったので慌てて何枚か撮りました。

ここで休憩を挟み肥土さんに色々お聞きしていました。内容は割愛させて頂きます。

そして最後にドラフアウトの作業です。ここで肥土さんから名誉ある肩書きを頂きました。秩父蒸留所の「ドラフマン」に認定して頂きました。数多くあるアンバサダーより嬉しく思い何故にドラフマンとお聞きした所、今まで色んな方が秩父に勉強に来られたそうですが、ドラフを食べた人は居ないとの事で、私が唯一の人間とのことです。感想は思いのほか甘くて美味しい。普段から全粉砕のビスケットを食べているせいか、結構個人的には気に入りました。むしろこれを焼いてチョコレート等でコーティングしたら売れると一人思っていたら、是は契約をしている農家の牛の餌に回されるとの事です・・・。

そしてドラフアウト作業ですが、ここでハスクの層の出来具合を見ることができるのですが綺麗にミルフィーユ状になっていました。ハスクの下にグリッツ、フラワーが層になっていました。ここも大切な確認工程です。そしてドラフリムーバーを回してドラフを下に置いてある容器に入れ水切りをして置いておきます。書くのは簡単ですが実際に作業をするとドラフは熱く、大変重たいので危険な作業だと思いました。

これで当日の体験記は終わりです。最後まで読んでくださりありがとうございました。書ききれていないこともありますが、本でしか知らなかった事を実際に目にすることができ、そして一日居させて頂けたお陰で確実に自分の知識として蓄えることが出来ました。当日得た知識を少しでもウィスキー愛好家に知っていただけるように頑張ります。本当に秩父蒸留所の皆様のお陰です。
ありがとうございました。

余談ですが、肥土さんに紹介して頂いた蕎麦屋さん激ウマでした。秩父に訪れるのは2度目ですがその際も駅周辺にある
蕎麦を食べ喜んでいたのですが、今回はそれ以上に美味しかったです。もちろん店名は忘れましたが(笑)。肥土さんは大の蕎麦すきで、秩父にある殆どの蕎麦屋を回ったそうです。(笑

終電まで時間が有ったので皆さんが良く行かれるバー チェアリーさんも立ち寄らせて頂きました。やはり、秩父蒸留所のお膝元 イチローズモルトが沢山並んでいたのと、レアボトルがチラホラ目に留まりました。 ダンピーボウモア等が平然と並んでいました。此方では大好きなジントニックとスケアクロウを頂いたのですが、途中、前日寝ていなかった事もあり居眠りをしてしまいました。店主のYさんすいませんでした。肥土さんから「スケアクロウは某有名歌手のCDジャケットにも採用されているのですよ」とか「合計4回しか流れなかったのにも関わらず2パターンもCMが作られたのですよ」などの話を聞きました。

近い内に再び蒸留所に行かせて頂くと思いますので、その節は、宜しくお願い致します。また秩父に訪れる楽しみが又一つ増えました。ありがとうございました。

アイラバー東京
浅井雅史

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 快く転載を許可して頂いた浅井氏に感謝いたします。

#うんちく

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