――江戸時代後期の1804年。
ロシアの千島進出に対して、
幕府は「東蝦夷地」を直轄とするために、「蝦夷三官寺」を指定した。
三官寺とは、有珠善光寺。様似の等澍院。そして厚岸の国泰寺である。
ここは内浦湾沿いの小高い丘に建つ、その「有珠善光寺」。
本堂で、お守り札の中に、印籠を見つけた。
誰もいない本堂の
「御用のお方はハンギを強く打ってください」
という張り紙につられて、
備え付けの小槌を、
カーン・カーン・カーンと三回強く打つと、
やや暫らくして、何処からか「お庫裏さん」があらわれた。
――すみません。この「葵の御紋の印籠」を記念にと思い・・・。
・・・オミヤゲにしたいのですが3つだけしか有りません。
――お待ちいただけますか、探してまいります。
――かたじけない。
そう言うと、お庫裏さんは、丁寧にも探しに行ってくれたのであった。
・・・
――やはり、それだけのようです。
――ご親切痛み入ります。それでは、これを頂きましょう。
・・・・
――「鎮まれ、鎮まれ~。これを一度、言ってみたかったのです。」
やはり、バイヤーは買物好きなのだ。
・・・それにしても、
その伝説は、はるか平安時代まで遡る、
ここ有珠善光寺の佇まいは、
北海道ではなかなか見かけない風情で、
妙に懐かしい気分で落ち着くのだ。
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