――あれ、ボウモアじゃないですか。「ケルト」じゃないのですか。
――は、は、は、出し惜しみもバイヤーの特権乱用。
――まぁ、ボウモアはスグになくなりますからね。
――そうそう。このスリーリバースボウモア1994いいですよ。
――何処がどうなんですか。
――近頃のフルーティモノとは一線を画す、硬派の荒々しさがあります。
是非オススメです。
――うーーん。判んないけど、なんだろう。コレ子供の頃のキャンプの香りだ。
――そうかマッキーは、海でキャンプしたんだね。いい感性してるよ。
――わー、キツイ・・・。でもワタシこれ好きです。
――ありがと。
・・・そういえばここ数年、
常に何処かでモルトの「寿命」とか考えながら、ウィスキーを愉しんでいた。
それで、いまのところの印象は、やはり18年位がいいところかなあ・・・。
という所に落ち着いている。
それは実に単純な、ボトル選定のセオリーでもある。
結果的に、そのモルトの特性を、もっとも豊に、しかも素直に感じられるボトルは、
「18年モノ」と称するボトルに多いことは、以前から感じていた。
もちろん、これは素人判断の、感覚的なもので、別に深い意味などない。
一方でそれは、これはちょっと豪華にという、
マーケティングのセオリーでもあるのかもしれない。
ところが、様々な要因からか、「18年」持たないモルトにも多々巡り合った。
・・・そうか、このモルトの寿命は、こんなものなのか。
なんて勝手に思ってしまうのだ。
・・・それも、じぶん流のモルトとの付き合い方に過ぎないかもしれないけれど。
素人のバイヤーが、これまで飲んだショットは、
たかだか4000ショット位なものだろうから、別にどうという事はなく、
これはモルトの世界から見れば、爪のアカをちょっと齧った程度にも及ばない。
ディステラリーには、
まだまだお目に掛からぬウマイ樽が、限りなく埋蔵されているのだ。
それで、無い物ネダリの物欲にも際限がなく、
ついつい希少なボトルに及んでゆくのだが、
はたして、それに見合う、付き合い方をしているのかと、
自問して、ついつい、口が悪いもので、
――まあ、下品な。・・・なんて自己嫌悪したりしているのだが、
それは熟成相応の、モルトとの付き合い方というものを自らが心得ているのか。
という自問自答の言い訳でもある。
・・・それで、永い時間を掛けて熟成した、希少なボトルが目の前にある。
半世紀もの眠りから覚めて、いまここに甦るワンショット。
ああだ。こうだ。と思いつつも、ちょっと待てよ。ちょっと待てよ。
と一方で、何かを探し求めるものがある。
それはいったい何なのか。
自らの経験の範疇を超える一杯のモルトとの出会いに、
あれやこれやと、よぎる想いも、やがて薄れて、
ただ、ぼんやりと浸っているのも、
さすがに長い時を越えてきたモルトならではの、楽しみなのだ。
ウトウト。
――ちょっと、ちょっと、バイヤーさん。
――あっちゃー、いけねえ。オレも何かボケてきのだろうか。
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