(写真はイメージです)
CLUBの新着ボトルの一つひとつを、
たしかめる様に、定点観測するように、
味わうのもバイヤーとしてのつとめ。
久しぶりにラベルも変わった新ボトルを味わうとするか。
――あれ、ずいぶんイメージが変わったな。
香りも、口当たりもスムースになって、これならスイスイ飲んでしまいそう。
そんなことを感じつつ、グラスをころがしながら、
カウンターで、クラブの仲間と世間のヨタ話で盛り上がっていた。
時代の転換期にあっては、
メディアの伝達は報道と誘導の境が入り乱れる。
ーーまあまあ、そんなに熱くなりなさんな。
そうしてみずからバランスを失い、信頼を損ね、立ち行かなくなって・・・、
こうして、時代は転換してゆくのだろうな。
それがリセッションなのだろう。
――そんな中で暮らしているわれわれは、
何処にみずからの「立ち位置」があるのか。
ものの出自を見失わないように、
しばし記憶に立ち返らなくてはならない。
それも情報リテラシーというものなのだろう。
――すべての出来事は、つながっているのだよ。
それをひとつだけつまみ出して、スベッタコロンダいうのは、
だいたいフェイクだ。
・・・そんな話でふらふら行き来して、
半時ばかりが過ぎたであろうか。
手元のグラスに立ち返ると、
あれ、グラスのモルトが、一変している。
――そうか、そうだったのか。
これが昔から変わらない。本来の姿だよな。
泥臭くても、いいではないか。
おしゃべりをしているうちに、手元のモルトは、
空気となじんで化粧がはがれ、すっぴんモルトになった訳だ。
――厚化粧も程々にした方がいいぜ。
そんなコトバといっしょに、残りのモルトを飲み込んだのだった。
#■MALT WHISKY