――せっかく、余市のウイスキー工場を見学したからには、
積丹まで足を伸ばして、おいしい海の幸を満喫しなくてはならない。
そう考える事は、当然なのであった。
それで、シングルモルトと競馬が好きな同好の面々が、
夏の積丹半島へ向かった。
途中信号で止まったコンビニで、
到着したばかりの競馬新聞を買いあさり、
我々だけで、コンビニの競馬新聞が、すべて売切れになるという、
先制攻撃は見事なものがあった。
そして一同、岬の先端の丘に登り、
海に沈む夕陽に向かって、
これから始まる戦いの、必勝祈願を神妙に済ませ、
海の幸の夕飯に臨んだのである・・・。
――本まぐろ・蛸・ぶり・なんばん海老・生うに・・・、
そして蝦夷アワビ・モズク・真つぶ・・・・。
今更のように思うのだが、この辺りで、
打ち止めとしておけばよかった。
あとはウニ・アワビ・アワビ・ウニの波状攻撃に、
食卓は防戦一方であった。
しかし、敵の攻撃は、
さらに、ボタン海老・帆立・青つぶ・ヘラ蟹と止むことなく続き・・・、
やっとのことで、デザート停戦へ持ち込んだが、
食卓は手付かずの海の幸が、多く犠牲となって残された。
それで、アワビの丸焼きとかを人質に、部屋へ撤退したのだが、
誰一人、すでにウニとかアワビとかは見向きもせず、
けっきょくそのまま、満腹の睡魔に襲われてしまった。
・・・こうして「積丹半島夏の陣」は、
小樽・余市・美国そして札幌競馬場と、
各地に戦火を拡大させたが、
ひたすら腹だけは、満腹の、
無残な敗戦に終わったのであった。
――ことしは、場所を変え、
戦略も新たに、確勝を期して、
さらなる「夏の陣」に挑まなくてはならない。
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