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■言葉がうまくしゃべれなくても・・・

言葉がうまくしゃべれなくても、
「シングルモルト」を知っていれば、「旅」の退屈もだいぶ紛れる。
そんな事を実感したのは、マンハッタンのホテルのBARだ。

遠慮がちにカウンターの隅で、一人モルトウイスキーを飲んでいると、
「うまいのがある、一杯おごるぜ」とバーテン氏が話しかけてきた。
「ラフロイグのカスクじゃないか。これはイケルゼ」というと、
「おまえはナイスだ」といって、スペイン出身のバーテン氏と、片言のハナシは、はずんだ。
カウンターの周りを見廻すと、なんだ皆「バドワイザー」じゃないか・・・。

――以来、外国で、国内で、知らない街で、「BAR」の灯かりは有難い。
一人ひょっこり、お邪魔をすることが楽しくなった。
「BAR」も「シングルモルト」も世界中にある。
・・・近年では、映画「ホテル・ルワンダ」の、あの悲劇のストーリーの中でも、
「モルトウイスキー」が《機能》していたのが印象的だ。

――そんな訳で、一人上海外灘のHOTELのBARへ。
世界の中心=中国で、辺境の酒、「スコッチ」を飲もうとメニューを見廻すと、
「威士忌」「威士忌」とあるのがウイスキーなのだ。
その、当て字?を見て、
「ああ、ここは中国だったのだなあ」
と、アヘン戦争以来の近代の歴史がアタマを掠めた。

えらく量の少ない、グラスの「威士忌」の追加をオーダーする度に、
「威士忌」「威士忌」とメニューの当て字を見る度に、
酔いは妙に覚めて、しらじらとして来る。
隣の国なのに、ずいぶん遠くへ来たような気がしたものだ。

―――あれから、もう10年近く経つ。
急速な経済発展が続く中国では、「威士忌」の人気が年々高まってゆくことは、
容易に想像出来ることだ。
人気のシーバスリーガルは「芝華士」。マッカランは「馬加蘭」。
黒ラベルは「黒方威」。 赤ラベルは「赤方威」。
バーボンは「波本」。そして、シングルモルトは「単一麦芽」。
・・・これはじつにわかりやすい。スコッチは「蘇格士威士忌」という事になる。

きょうは、このくらいにしておこう。
謝謝。

#■JOURNY

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