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ザ・フェイマス・グラウス/「Bar d」田辺武さん


 

黄色い壁に張り付いた “Bar d” の文字を確認しながら階段を上り、扉に手を伸ばすとその重さがずっしりと伝わってくる。鉄柵にガラスがはめ込まれた入口は、開放と閉鎖を同時に感じさせ、そこが確かにバーであることを意識させる。

小田急・片瀬江ノ島駅からまもないロケーション。ステンドグラスが施された窓からは境川と行き交う観光客を眺めることができるが、振り返ればオールドボトルが並ぶバックバーが。テラス席があるカフェのような外観が、良い意味で裏切られる瞬間だ。

此処の店主である田辺武さんは、1990年に千葉の南行徳でバーテンダーを始めた。スコッチはさほど好きではなかったが、本八幡のバーで雷鳥が描かれたフェイマス・グラウスに出合うと「これなら飲める」と素直に思った。さらに、その原酒であるハイランドパーク(※)を飲んでシングルモルトに、1970年代の雷鳥でオールドボトルに目覚めることになる。

それから小岩、赤坂とレアなウイスキーが豊富に揃うバーを経て、2003年に銀座でバー「Dolphy」を開店。ウイスキーもカクテルも逸品を供する店として、知る人ぞ知る存在となった。2014年には銀座店をスタッフに任せ、自身は片瀬江ノ島へ。遠方にも関わらず、田辺さんのもとへ訪れる客はいまも絶えない。何処にあっても、会いたいと思えるバーテンダーがいれば自然と足が向くものだ。

リバーサイドに根付きつつあるバーの原点となった、雷鳥のラベル。フェイマス・グラウスには、感謝せねばならない。
 
※1980年代流通の12年、シルクプリントボトル。

Bar d
神奈川県藤沢市片瀬海岸2-8-15
0466-53-9099
15:00~00:00
水曜休み

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ



 

#思い出のボトル

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