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ソロ・ペル・ジャン 2005/「Bar Keller」西田稔さん

「1981年のパオロ・ベルタ? 親父がつくった酒を持っているのか」

イタリア・ピエモンテ州にあるベルタ蒸留所の頭首だったジャン・フランコ氏が驚いたのは、京都のバー「K6」で自身さえ持っていないボトルを見つけたからだった。カウンターに立つ西田稔さんとすっかり打ち解け、その後現地へ招き入れると、20年熟成のものを買える唯一の人物として認めるようになる。

「俺には夢があるんだ。“トレ・ソーリ・トレ”“ロッカ・ニーヴォ”“ブリック・デル・ガイアン”の3種をブレンドして、まずは1200ℓの木樽で寝かせる。それから100ℓの小樽で1年間追熟したら、素晴らしいものが出来ると思わないか? いつか実現したら、一緒に飲もうな。カッパセイ」

カッパセイは、イタリア語で「K6」。西田さんがジャン氏から呼ばれていたあだ名だ。その夢がまさに叶えられる直前、ジャン氏は帰天した。

「ジャンの夢だった樽のお披露目会をすることになった。会の1日前に来てくれないか?」

弟のキッコ氏から連絡を受けた西田さんが貯蔵庫に着くと、18のブロックに10樽ずつが積み上げられていた。あるブロックにほかのものとは全く異なるニュアンスがあり、聞くとそこだけ3回蒸留だという。そのブロックから選んだのが、89と90番の樽。180樽の中から、世界で最初に購入する権利をキッコ氏が与えてくれたのだ。

現在は「Bar Keller」のバックバーに置かれた、89番の樽。ジャン氏の父パオロ氏からジャン氏、そしてキッコ氏へと伝わる思いが詰まっている。

「ジャンに捧ぐ」

ソロ・ペル・ジャンの意味を知ったとき、きっと誰しも胸が熱くなる……。

Bar Keller
京都府京都市中京区木屋町二条東入481 ヴァルズビル1F
075-253-0245
17:00~02:00
火曜休み
※会員制

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ

 

#思い出のボトル

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