スコットランドの歴史を語る上で、欠かせない出来事がある。1746年、スコットランド・ハイランド地方のインヴァネス近郊にあるカロデンムーアで起こった「カロデンの戦い」。英国政府軍が、スコットランド・ジャコバイト軍の反乱を鎮圧し、長く激しい戦闘に終止符を打った。しかし、その後もなおスコットランド人の心に傷痕を残すことになる……。
それから250年後、戦いの地に近いグレンモーレンジ蒸留所からその名も「ザ・カロデン・ボトル」がリリースされた。その頃、毎年スコットランドへ訪れていた大川貴正さんは、現地で発売情報を耳にする。
「帰国してから入手しましたが、すぐに売り切れましてね。翌年は、現地で購入しました。グレンモーレンジにはないピーティさがあって、とてもフルーティで抜群に美味しかったです。スコットランドの史実をモチーフにした企画も素晴らしい。ボトルネックが少し曲がっているのもいいでしょう?」
カロデンの戦いにおいて、スコットランドの司令官だったチャールズ・エドワード・スチュアートが司令部を置いた家にあったといわれるボトルのレプリカ。どのような思いで、造り手はこれを再現したのだろうか。
一方、日本のモルトバーを語るなら「Bar HEATH」の存在なくしては有り得ない。1987年に開店し、シングルモルトを知る客も扱う店も少ない中、モルトバーとして看板を掲げた。情報がほぼない時代に現地へ赴き、ボトルだけでなく文化を持ち帰ったのだ。その精神は横浜のバー「スリーマティーニ」の山下和男さんや新橋「T.O」の越智卓さんに受け継がれている。たとえ間接的であっても、影響を受けたバーテンダーは数知れない。
大川貴正氏
Bar HEATH
東京都国立市東1-15-24 B1F
042-573-5135
19:00~02:00(日・祝~00:00)
日・祝日不定休
絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ
#思い出のボトル