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白州10年/「Bar Conclave」坂本浩生さん

「森の蒸溜所」と呼ばれる場所がある。約82万平方メートルの敷地内に広大な森を有し、澄んだ川と野鳥のさえずりが美しく豊かな自然を育んでいる。冬には全体が雪で覆われると、甲斐駒ヶ岳の雪解け水が花崗岩により濾過され、ウイスキーの仕込水に理想的な軟水が流れてくる。

自然との調和を最優先に開設されたのが、1973年。バードサンクチュアリを設けるなど森林保護に努め、共生してきた。葉の色に四季を教えられながら歩いていると、此処が工場であることをすっかり忘れてしまいそうになる。大自然と人が、共にウイスキーをつくる。それが白州蒸溜所だ。

この地に訪れて、坂本浩生さんは特別な環境が白州の味わいを生み出していることを実感した。独特な清涼感と、微かに香るスモーキーフレーバーが奏でるバランスの良さ。それまで飲んできた幾つものスコッチウイスキーにはない味わいで、似たものも思い浮かばない。クセのあるアイラ島のウイスキーを好んで飲んでいた坂本さんだが、日本のウイスキーの魅力に忽ち引き込まれてしまった。

白州10年は、ソーダで割ったときに本領を発揮する。ハイボールブームが起きる前から、夏場にはソーダ割りをカウンター越しに勧めていた。ステアしなくとも、白州に直接あてるように注いだ炭酸が立ち上がり、泡が弾けるごとに爽やかな新緑の香りが広がっていく。まさに「森香るハイボール」である。

残念ながらこのボトルは終売してしまったが、坂本さんはいつか新しい10年が登場するのを心待ちにしている。当初、店に数本しかなかったジャパニーズウイスキーだが、いまはバックバーの最前列だけでも15本が並ぶ。

坂本浩生氏
Bar Conclave
神奈川県川崎市麻生区百合丘1-23-1 丸丘ビル202
044-954-6298
20:00~04:00
日曜日、祝日の月曜日休み

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ

 

#思い出のボトル

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