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オールド・クロウ/「Craftheads」野村浩二さん


 

大麦に止まるカラスがラベルに描かれたバーボン・ウイスキー「オールド・クロウ」。スコットランド出身のジェームズ・C・クロウ博士がケンタッキー州に移住し、1835年に創業した会社の名でもある。クロウ博士はサワーマッシュ方式(※)を発明したとされ、後にケンタッキーだけでなくテネシーやヴァージニアなどでもこの方式が採用された。

「ケンタッキーを訪れる度に、蒸留所へ立ち寄っていました。門の前で、持参した古いオールド・クロウのボトルを飲んだりしましたね。バーボン好きの聖地ですよ」

かつて毎晩のように酒場へ繰り出し、野村浩二さんは朝までオールド・クロウのソーダ割りを飲んでいた。安くて飲みやすく、大抵の酒場に置いてあるウイスキー。当時のラベルには、誇らしげに「ザ・オリジナル・サワーマッシュ」と記されていた。サワーマッシュ方式で造られた最初のバーボンというわけだ。
ところが1987年、ビーム・グローバル社により買収された後、蒸留所は閉鎖されてしまう。野村さんが訪れたときには同社の熟成庫になっており、「オールド・クロウ・ディスティラリー」という看板が残るだけだった。それでも毎回そこへ訪れては、在りし日の蒸留所を思った。

やがてバーボン好きが高じて地元の鷺沼に「Bar Sal's」を、10年後の2009年には渋谷で「Craftheads」を開店。どちらも、鋸や金槌を手にして自ら工事した温かみのある場所だ。野村さんが何度も現地へ向かい直接輸入した、珍しいクラフトビールやバーボンが目を引く。ここにしかないものを求めて、今宵も客人が集っている。
 
※バーボン製造の蒸留工程で、ビアスチル(コラム式の連続式蒸留機)の底部に「スティレージ」と呼ばれるアルコール分が取り除かれた残液が溜まる。そこから固形分を分離した温廃液「バックセット」を25%ほど仕込水と混ぜて糖化する方式。これによって糖化条件が良くなり、雑菌の繁殖も抑えられる。

 
野村浩二氏
Craftheads
東京都渋谷区神南1-13-10 EGGビルB1F
03-6416-9474
17:00~00:00(土~15:00~23:00、日・祝15:00~22:00)
月曜休み

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ

 

#思い出のボトル

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