海を思わせるヨード香と、スモーキーフレーバー、フルーティでスイート……。アードベッグといえばそんなテイスティングノートが思い浮かぶが、仕込水として使われる湖の名前が由来のウーガダールは、しっかりとしたボディの中に柔らかさがある。発売直後、セミナーで初めてそれを口にした片野靖雄さんは、それまでに感じていたアードベッグの強烈な味わいとは異なる衝撃を受けた。関内のバー「カサブランカ」に入店してまもない頃だった。
初期ロットは1991年、1993年蒸留のバーボン樽で熟成した原酒と、1976年、1977年蒸留のシェリーカスクで熟成した原酒をヴァッティングしている。蒸留所は1980年代に操業を停止していたため、その前後に蒸留されたものというわけだ。
アードベッグ独特の個性と自然な甘さは、蒸留釜に取り付けられたピュアリファイアー(精留器)によるものと言われるが、原酒の組み合わせも素晴らしかった。その絶妙なバランスに魅了されながらも、自身が76年生まれなことから親しみも感じた。
2010年6月、独立して開いた店のバックバーに、ウーガダールを置いた。中身は初期ロットの配合から変わっているが、それ以来ほとんど切らさずにいる。最近では、アリゲーターやアードボッグ(※)などもお勧めだ。
ただ、これまでアードベッグ蒸留所を訪れる機会に恵まれていない。かつてスペイサイドやキャンベルタウンを訪れたとき、現地に行く意味を感じた。原酒、製造、いろいろ直接聞きたいことがある。今年こそはアイラ島に、と思っている。
※アリゲーターは、樽の内側を最も強く焦がす「アリゲーター・チャー」を施した新樽で熟成させた原酒を一部使用したもの。アードボッグは、ピートが採掘される湿地(Peatbog)に由来し、バーボン・カスクとマンサニージャ・シェリー・カスクでそれぞれ10年熟成した原酒をヴァッティングしたもの。
カサブランカ 片野酒類販売
神奈川県横浜市中区太田町2-31-3 コーポサンライフ太田町203
045-228-7377
18:00~05:00(日・祝~03:00)
無休
絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ
#思い出のボトル