天使のようなグラッパ職人と言われたロマーノ・レーヴィ。イタリア・ピエモンテに住み、父親から受け継いだ昔ながらの製法を貫いた。戦前から伝わる直火式蒸留機を使い、燃料は蒸留後のヴィナッチャ(※)を乾燥させたものなども利用。その灰は肥料として、ブドウ畑に撒く。すべて手造りで、エチケットも手描き。特に、可愛い女の子“ドンナ・セルヴァーティカ”が描かれたものは人気が高い。
その名を付けたバーが、渋谷のファイヤー通りにある。建築デザインに長年携わった古屋敷幸孝さんが、2009年にお酒とチョコレートとアートの発信地としてオープンした。
「10年ほど前、バー巡りをしていたときのことです。カウンターに座っていたら、遠くの席から良い香りが漂ってきて。思わず私も飲ませて頂いたのですが、今までに出会ったことのない、ブドウの皮や種の濃厚な深い香りを感じたんです。それが、ロマーノ・レーヴィのグラッパでした」
それまでシングルモルト飲みだった古屋敷さんが、一瞬にして心を奪われた。その後、インポーターの酒蔵でドンナ・セルヴァーティカのエチケットを見つけ、それが店のアイコンとなった。
もうひとつの看板であるファインチョコレートは40種類以上を常備し、お酒とのマリアージュを提案している。グラッパに合わせるなら、ミルクチョコレート。ショコラティエ・ミキのコーヒービーンズショコラや、ヴァローナのタナリヴァ・ラクテをお勧めする。それらを口の中で混ぜれば、まるでカクテル…。そんな素敵なマリアージュを、いつもバックバーから羨ましそうに“ドンナ・セルヴァーティカ”が眺めているのかもしれない。
※ワインを醸造する際に出る、ブドウの搾りかす。
ドンナ・セルヴァーティカ
東京都渋谷区神南1-3-3 サンフォーレストモリタビル4F
03-6416-9272
18:00~02:00
日曜休み
絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ
#思い出のボトル