イギリスはエセックス州のバジルドン。ロンドンから東へ40キロほど離れたところで、そこにレインドンという町がある。以前からホワイトスピリッツに興味を持ち、新しいマティーニを開発したいと考えていた保志雄一さんは、レインドンの工場へ向かった。そこは、プレミアムジン「タンカレー」をつくる場所。1999年1月にタンカレーのブランドアンバサダーに就任したが、もともとマティーニのベースはタンカレーと決めていた。
4回蒸留による、洗練されたキレのある味わい。これをどのように活かして新しいマティーニに仕上げるか。工場へ向かう前に、ニューヨークの「メトロポリタン・ホテル」やロンドンの「デュークス・ホテル」などでマティーニを飲んだ保志さんは、日本ではまだ珍しかったフルーツ・マティーニに衝撃を受ける。そして帰国後、ストロベリー、キウイ、メロン、パイナップル、ピーチといったフルーツ・マティーニをはじめ、107種類ものマティーニを完成させ、2000年にジャーディン・ワインズ・アンド・スピリッツ(現MHDディアジオ・モエ・へネシー)から『THE PERFECT "Tanqueray" MARTINI BOOK』(非売品)を発行。その情熱はマティーニだけに留まらず、ボストンシェーカーやバーズネスト、ペストルの開発にまで波及した。
レインドンの工場では、その歴史や製法を学び、「タンカレーのボトルデザインは消火栓をモチーフにしたものなのか?」という当時の疑問も、実際はカクテルシェーカーだったと聞いて納得した。そうして熱心に学ぶ保志さんに、蒸留所からプレゼントが。タンカレーのティンキャップだった。年代は定かではないが、ティンキャップということは1960年代より前のもの。希少な逸品だ。なかなか封を切れないが、いつか開けてみたいと思っている。
BAR 保志
東京都中央区銀座6-3-7 AOKI TOWER 8F
03-3573-8887
18:00~03:00(土・日・祝~01:00)
無休
絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ
#思い出のボトル