10月8日に神戸のホテルオークラで行われた「ウイスキーセミナー」に参加してきました。
講師は、サントリー山崎蒸留所チーフブレンダーの輿水精一氏。
「レクチャー」と「テイスティング」「ブレンド体験」の順で行われました。
「レクチャー」は、ウイスキー作りに関する簡単な説明が主で・・・ウスケバのみなさんにはちょっと物足りない内容だと思われますので割愛。
奥左:白州18年 | 奥中:ミズナラ原酒 | 奥右:響 21年 |
手前左:山崎18年 シェリー樽原酒 | 手前中:山崎18年 | 手前右:白州18年 シェリー樽原酒 |
蒸留所やボトラーでウイスキーの品質に責任を持っている方の解説を聞きながらテイスティングするのは、私にとってはとても有益なことです。解説を聞くことによってウイスキーの印象が「誘導される」こともありますが、それは逆に、自分の香味判断の基準の微調整にもなります。
「ブレンド体験」では、白檀を思わせる香りでわずかにドライなミズナラ原酒(15mlほど)に、かなり強烈に燻製香がするスモーキー原酒をわずか一滴だけ垂らす、というもの。
けれども、たったそれだけで全く印象が変わりました。ミズナラ原酒に輪郭が表れてきました。これには正直、驚かされました。良く言えば「広がりがある」悪く言えば「捉えどころが分かりにくい」ミズナラ原酒が締まってしっかりした感じになり、特徴もハッキリとしてきました。
私は、さらにもう一滴だけスモーキー原酒を加えてみたのですが…とたんにスモーキーさに支配されてしまい、ミズナラも台無しになってしまいました。ブレンドは実に微妙なんですね。
その他、セミナー中に輿水さんが話されたことで、興味を感じたものをいくつか書いておきますと。
- イギリスの酒類国際コンペティション第12回「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2007」で、響30年が最高賞であるトロフィーをジャパニーズ・ウィスキー部門で受賞しました。同じくブレンデッド・スコッチ・ウイスキー部門では、バランタイン30年が受賞しました。そして、モルト・ウイスキー(Distillers Scotch Whisky)部門では、なんとシングル・モルトを抑えて、ヴァッテッドのフェイマス・グラウスのモルト・ウィスキー30年が受賞しました。このことは、スコットランドの蒸留所にはショッキングな出来事だったようです。前週の授賞式にも出席しましたが、『ジャパニーズとアイリッシュがいいウィスキーを作るようになってきている。スコッチもうかうかしてはいられない』というようなことを総評で言っていました。
- スコットランドのブレンダーは、スコットランドで生産されたウィスキーであればどこの蒸留所のものでも自由に使えます。例えそれが、グループ会社の蒸留所のものでなくても、です。けれども日本ではそうは行きません。例えば、サントリーがニッカの樽を使うなんてことは、今の商習慣では絶対にありえません。
- スコットランドでは法律があり、スコッチ・ウイスキーにはスコットランド以外の国で生産されたウィスキーを使うことはできません。けれども、スコッチ・ウイスキーという言い方はせずに、サントリーを使ったウイスキーを作りたいという話はあります。
- ミズナラの木は、10cm太くなるのに30年かかります。樽にできるくらいに育つまでには200年近くかかります。ですので、サントリーでは「200年計画」と言って、毎年、確保できている(ミズナラの木の)200分の1しか伐採して使いません。
- シェリー樽熟成用に使う樽は、スペインで作っています。樽を作った後、その樽をシェリー酒メーカーに貸し出してオロロッソを3年間寝かせてもらってから、空にして日本に運んできます。
樽を作る過程で内側を焼くのですが、その焼き加減も熟成に影響を与えます。日本の樽職人だと、この焼き具合も「きつね」「たぬき」と呼んで加減ができます。けれども、スペインの樽職人は、この焼き加減を調整できない。彼らは、木を曲げるためだけに樽を焼いているからなんです。 - 樽の中のモルトは、天使の分け前として年に2、3%ほど減りますが、20年経つと半分くらいに、50年くらい経つとほとんどなくなってしまいます。サントリーでは、20年くらい熟成された樽の中から、さらに長期熟成させたいウィスキーを選んで、それらを集めていい樽に移し変えて、熟成を続けるという手間をかけています。スコットランドの蒸留所ではこんな面倒なことはしませんね。
(この話を受けて、参加者から質問)
質問:サントリーで作ったウィスキーを、ブレンドに使いたいからと購入したスコッチのブレンダーはいますか?
#日記