カレンダーの余白に、明日5月6日は、
「ゴムの日」なんて書いてある。
知らなかったな。
それで思いあたるのだが、バイヤーにとっては、
「ゴム」臭モルトこそ、回避すべき課題なのである。
だから「ゴムの日」とは、
バイヤーが、もっとも恐れをなす日であって、
謂わば、「安息日」・「仏滅」と同義なのである。
何故「ゴム」臭なのか。
詳しい現場の事情は知る由もないが、
これはアルコールの持つ宿命なのか。
或は使古しのシェリー樽に起因するオフフレーバーの呪いなのか。
野球に喩えれば、
ストライクゾーンをおおきく逸脱したデッドボールのイメージだが、
しかしそれは、ボトルの封を解かなくては判らない。
そのゴム香といえば、今のCLUBの棚で思い出してしまうボトルが、
「ブナハーブン」カスクだ。
これを見た、会員様におかれましては、
典型としてのボトルを是非お試しいただき実感頂きたい。
――このように数あるモルトのなかには、
バイヤーが鬼門とする蒸留所もいくつかあって、
そのひとつが、この「ブナ様」なのだ。
ちなみに過去の対戦成績は、
1勝7敗2引分という感じで、まったく歯が立たない難易度の高い、
恐るべきディステラリーのひとつだ。
それでも、本やネットをちょっと齧ったゲスト様が、
棚を眺め回して、
「あれ、ばあいやーサン、ブナハーブンとか無いのですか」
なんてツブやかれると、
「むむっ」と、弱点を指摘されているようで弱いのである。
それで、モルトの教科書の記述には、
――うすく・うすく。とブナ様のモルト特性には、
薄口を強調しているのも尤もで、モノは言いようなのだろう。
――これ、バイヤー。申してみよ。
――はっはっー、お代官様。いやブナ様。
バイヤーがわるうございました。
ちゃらちゃらと、調子込んで、
ブナ様をセット扱いしようと甘く見ました。
――カスクを甘く見るでないぞ。
――はっはっー。御意。
かつてダンボールに囲まれて仕事をしていた、バイヤーとしては、
あのリトルミルの香りに、或る種の郷愁を覚えるように、
ゴム香の勝ったモルトに、
郷愁を感じる人々も、世の中にはきっと居るに違いないであろう。
だがしかし、湿潤・温暖なこの島の風土では、
やはりゴム香は回避しなくてはならない。
・・・そう言う訳で、「ゴムの日」から連想して、
カスクはリスクだ。
というはなし。
#■MALT WHISKY