今週は北海道も、秋の観光で賑わっていることと思いますが、
きょうは、ちょっと前の、この夏のはなし。
――念願かなって、ようやく「北限のブナの森」がある、
黒松内を訪ねる事が出来ました。
「北限のブナの森」で知られる黒松内は、
リゾートで脚光をあびるニセコの隣町です。
・・・久しぶりに訪ねる「黒松内」は、
あれっ、と思うほど、とても洗練された、
静かな佇まいの町になっていました。
仕事の事とか、暮らしのこととか、
思いを及ばせなければ、通りすがりの者には、
黒松内は、あるべき理想の姿の、村のように見えます。
それは、ここに住むひとびとの愛郷心のカタチでもあります。
昔は国有鉄道の施設があって、
人口も多かったのでしょうが、
いまでは、人口3000といいます。
人影もまばらな町ですが、歴史をものがたる立派なお寺があり、
また立派な公共施設が目立ちます。
「ブナ」と「福祉」で町おこしをしているのだそうです。
「北限のブナ」はそんな黒松内の、
なんの変哲も無い裏山に自生していました。
「歌才ブナ林」のカンバンのある場所で、
「入山記録」に記帳して、山に入ります。
・・・なるほど。
毎日数名の方が、全国からこの森を訪ねていることが判ります。
ノートと一緒に、林野庁のポッケロが置かれていました。
――タバコの投げ捨てはやめましょう。
――はい。
といって記念にポッケロを一ついただいて、タバコを吸いました。
ブナの森で吸う、ニコチン・タールたっぷりの、
ロング・ピースもまた、じつに味わい深いものがあります。
それで、ブナですが、
ここのブナは、わたしが勝手にイメージしたブナとは違うのでした。
――わたしは、子供の頃、神奈川県の丹沢山の山頂から、
北側斜面にひろがる、立派なブナの森が大好きでした。
その大木のブナの森も、東名高速からの排気ガスの影響か、
近年、すっかり立ち枯れてしまったと聞いております。
それで、その失われた、丹沢のブナに再会できるような気持ちで、
北限のブナ林に遣って来たのでした。
しかし写真でもわかるように、
ここのブナは、一様に幹がひょろっとしていて、
まるでパームツリーや白樺の幹のようでした。
・・・それは、夏が極めて短い、つまり雪と氷に閉ざされる冬の長い、
北海道の気候が、きっとそうさせているのでしょう。
それでも、奇跡的?に残されたブナの森が、このあたりから、
島牧村の背後の山にかけて存在する事がわかったのです。
ブナが北海道の渡島半島に渡ったのはおよそ6000年前と云われています。
そして、この場所まで辿り着くまで、5000年の時間が必要でした。
結果として、ブナは年間20センチづつ北へ向かっているのだそうです。
これから、ブナはどこへ向かって行くのでしょうか。
もっとも、それは、地球レベルでは、きわめて「短い」スパンの話で、
もっと広く言えば、以前ナウマン象の遺跡からブナの実が出土した、
なんていう話もどこかで読んだような気がします。
そうして、先の台風で倒れたミズナラの巨木や、
樹齢150年以上のブナの巨木(ブナの寿命は200年位といわれる)
を眺めて、誰もいない森の中で、ひと時をすごせば、
やはり、ここでモルトウイスキーを味わわなくてはならないのでありました。
それで、晩にお世話になる、
「歌才自然の家」にクルマを置きにいって、
チェックインをして、ちゃらちゃらと、
ふたたびモルトを飲みに、裏山のブナの森を目指したのです。
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