――週末のグループ客で賑わう、カクテルBARで、
勧められた、おいしいグレンギリー二種を愉しんだ後は、
カウンターも混んで来たので、
何処か、別の場所へいって見るか。
なんて、ワガママを言ったら、
BELLE OF・・・は如何ですか。というから、
BELLE OF・・・は昨晩遅くに行って、
おいしいソサエティのグレングラント27を頂いたのさ。
――それでは・・・・、としばし考えて、
――「大先輩」のお店にご案内します。
――そこって、何処。
――すぐ其処です。と言いながら、若き女性マスターは、
そのままわれわれを引率して、路地から路地へキビキビと歩き出した。
――今夜はすごく忙しいのに、・・・教えてくれれば自分で行きますよ。
――グループの人たちは、飲み放題ですから、“カンズメ”なのです。
なんて、一人ゴトのように、彼女はポツリといった。
・・・そうか、双方が分かっていて、グループ個室を稼動させて、
一方で、本来のカクテルの質を高める。
・・・男には出来るようで、なかなか出来ない、
その賢い割切り方に、二度感心した。
そうしてわれわれは、若き女性マスターから、
「大先輩」へ無事にリレーできたのだ。
――ほんと、ご親切痛み入ります。
「大先輩」は、美しいご夫人と夫唱婦随で50年。
いまだ現役は、北海道でも、あのススキノの「BARやまざき」に次ぐという。
――そうですか。
それだけでも、通りすがりの客としても、感無量です。
そんな感じで、カウンターからバックバーへ目を遣ると、
プラットホームで車中の竹鶴氏をお見送りする、
若き「大先輩」の写真が目に留まった。
――ムム。このシェイカー。
何杯のカクテルを生み出したことであろうか。
そう思えば、ただのシェイカーも、いぶし銀の輝きを増す。
その隣の、ピッチャーは1972。
・・・そうだ札幌オリンピック記念のサントリーメイドだ。
――そして、ボックス席を照らすスーパーニッカシェードも、
今となっては、じつに貴重なアイテムなのだ。
やわらかなボウモアカスクを味わいながら、
今夜もお陰さまで、素敵な夜になった。
街で若者に人気の女性マスター。
円熟の時を迎えた地下のモルトバーBL。
そしてこの道50年・NBA前会長の「大先輩」。
それぞれが、マニュアルなんてない、
あうんの「個性」で連帯して、
北の街・旭川の夜は更けてゆく。
■SPOON =S.Tanemura
■BELLE OF LINCOLN =K.Yamaguchi
■BALALAIKA =K.Nakaya
#■MALT WHISKY