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”ザ・ウイスキー・キャット” 

関西ウイスキークラブは、ウイスキーを好きになってくれる人が増えるようにと思って企画を考えていますので、あまりディープな内容にならないように気をつけていますが、企画世話人はそのディープな世界にすっかりはまっています(笑)。

ときどき、読んだ本やその本によって自分なりに得られたことを書いていこうと思います。もし、皆さんにとって当り前のことが書いてあっても、笑ってスルーしてやってくださいませ。

まずはこの本から。

 書 名: ザ・ウイスキー・キャット
 著 者: C.W.ニコル著、松田銑訳 森山徹撮影 
 出版社: 講談社 ISBN4-06-201651-6
 出版年: 1984年
 ページ: 143ページ

この本は1982年に蒸留所を取材しにスコットランドを訪ねたときにそれをまとめる形で小説にしたもの。グレンゴァという架空の蒸留所のヌースというウイスキーキャットを通して、蒸留所の仕事やウイスキーキャットの役割、そしてウイスキー職人達を描いている。

約70枚の写真があって、グレンタレット蒸留所のタウザーがまだ元気な様子で写真に撮られているし、多くのウイスキーキャットが写っている。さらには蒸留所、スコットランドの風景、少し年を取った職人達の様子などが写真にまとめられている。

80年代前半のウイスキー不況で閉鎖される蒸留所。その蒸留所からグレンゴァに移されるヌース。そこには、おそらくタウザーに見立てたアザーキャットという偉大なメスのウイスキーキャットがいて、大麦とモルトを守り、ネズミ達と戦う技術を身につけるために、彼女がヌースを厳しく育てていく。その様子を蒸留室のジムじいさんが暖かく見守る。一人前になるまでの様子、アザーキャットの死、定年で退職するジムじいさんとの別れなどをヌースの言葉でつづっていく。

ジムじいさんの退職のシーンは泣ける。そして、ジムじいさんのせりふがとても示唆的。

「なあヌース、わしがいなくなったら、もうろくなウイスキーは
 できゃしないぞ。あいつら早く作り上げようとばかりして、
 少しずつ、ゆっくり、ゆっくり垂らさずに、
 滝みてえにザアザア流す。それじゃあ駄目なんだ。
 うん、いいウイスキーは一滴一滴造って、
 一滴一滴味わわにゃいかんものだ。」

でも、ご安心を。次のせりふが続く。

「(略)だがな、あそこの鍵のかかった倉の中にゃ、
 このおれの造ったウイスキーが
 何千樽もかこってある。 (中略) 
 それだけありゃ、たくさんのしあわせな人たちが、
 たくさんのパーティを開けるわい!」

C.W.ニコルさんはウイスキーの専門家ではないけど、本当にウイスキー、蒸留所、そこで働く人々、ウイスキーキャットたちへの愛情が伝わってくる文章となっている。下手なウイスキー入門書よりずっといいと思う。

この本から全部の写真を抜いて、数枚のイラストを入れただけの本もでている。
 書 名: ザ・ウイスキー・キャット
 著 者: C.W.ニコル
 出版社: 河出書房新社 ISBN4-309-25152-8
 価 格: 1600円+税
文章は変わらないけど、写真がないので注意が必要。

#本・資料

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