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秩父蒸留所体験記1(転載)

 奥歯が縦に割れて、この後大学病院に治療に行くGIANです。

 mixi仲間のアサイさん(某六本木バーの店長)がベンチャーウィスキーの秩父蒸留所で一日研修をしてきたそうです。ミクシィ日記に体験記を書いてあったのを読んでおもしろかったので、本人の許可を得て転載します。

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2008年6月8日
秩父蒸留所 一日体験記

最初に無理な依頼を快く受け入れて下さった株式会社ベンチャーウィスキーの肥土伊知郎様、内堀修省様、門間麻菜美様、渡部正志様にこの場をお借りして感謝致します。 ありがとうございました。

当日見た事、聞いた事を順番に書いているために作業工程が前後していますがお許し下さい。

六本木駅を始発5時9分に乗りこむ。前日仕事が終わってから仮眠することなく電車に乗り込んだが興奮のあまり寝ることが出来ませんでした。後で寝ておけば良かったと少し後悔しましたがそれはさておき目的駅の西武秩父駅に7時9分到着。

西武秩父駅に少し早く着きすぎたので秩父駅周辺をぶらぶらしていると、徒歩三分の所に「お花畑駅」と言う何とも可愛らしい駅名が目に付いたので、きっと、駅周辺は花畑があるに違いないと一人早合点をして歩いて行ったが、特に花畑はありませんでした。駅蕎麦があったのでここで朝ごはんを頂戴しました。秩父と言ったらウィスキー・蕎麦・日本酒ですよね。

駅からタクシーで20分ほど行くと右手側にキルン塔が見えてきました。場所は、みどりが丘工業団地内の一角。

まず、敷地に入ると建物が4つに分かれているのが特徴的でした。熟成庫、キルン塔、蒸留所 そして建設中の建物。ここは、事務所棟(一部をゲストスペースとして使用予定) との事です。理由は来客して下さる方も増えているのでリラックス出来る場所も有った方が良いと思い建てている最中との事です。見学に行かれる際は必ず事前に連絡が欲しいとの事です。急に来ていただいてもスタッフが少ない為対応出来ないとのことです。そして予約をして午後に来て頂けたなら肥土さん自ら案内をして頂けるとの事です。

ご存知の方も多いと思いますが、現在、秩父蒸留所で働いているスタッフは社長の肥土伊知郎さんを始め、元軽井沢に居られた内堀修省さん、ウィスキーエキスパートを持つ門間麻菜美さん、元日本酒に携わっていた渡部正志さんの4人です。

蒸留所に入ると最初の部屋が事務室で、ここで久しぶりにお会いする肥土さんが笑顔で待っていて下さいました。

正直、肥土さんとは、試飲会場等でお会いしたことしか無かったのにも関わらず此方から何度かメールを出させて頂き、無理やり一日体験をお願いしていたので、お会いするまではかなり緊張をしていましたが、優しく対応をして下さったので緊張が少しほぐれました。

8:30にスタッフMT開始、この日は内堀さんがお休み。MTでは肥土さんに前日の作業内容を報告していた。マッシュ担当の門間さんが前日の麦汁の白濁具合、温度、得られた甘さ等を自分のスケールで話され、スチルを受け持つ渡辺さんが、前日の蒸留に関するデーター、ニューポット量等を話されていた。無駄口が一切無くピーンとした空気がすでに部屋を占領していました。後で分かったのですが、秩父蒸留所では完璧に受け持つポジションをきめているそうです。

マッシュ担当が内堀さん、門間さん、スチル担当が、渡辺さん、肥土さんは、両方を担当されています。ボトリングは全員で行なうとの事です。休みは交代でとり、休まれた人の担当を肥土さんが受け持つとの事です。

早速皆さんにご挨拶をさせて頂き、作業場に入れていただく。最初に感じたことは入り口から作業場が全て見渡すことが出来、自分が今まで訪れた事がある蒸留所とは一切違った雰囲気でしたが、蒸留所特有のウィスキーの香りが充満していて、蒸留所に来たと実感しました。

最初は世界で一人しか居ないと言われる、マッシュウーマン門間さんの後を付いて歩き、マッシュタンの所まで行きました。マッシュタンは2400L、レーキが付いていないロイタータンタイプです。蓋は自家製との事です。

最初に行なった作業は、前日綺麗に洗い終えたマッシュタンに熱湯を入れ、入れ終わったら棒で底を何度も叩く。

マッシュを入れる前に叩くことにより、マッシュタンの底にあるロイター板の間の空気を抜く意味があるそうです。叩かないとハスクとロイター板との間に空気が溜まってしまい、最後に麦汁を抜く際に時間が掛かり最悪でてこない事もあるそうです。

そしてお湯を入れる理由は2つあるそうです。
1 殺菌効果
2 マッシュタンの温度を上げる
マッシュタン自体の温度が低いと、麦芽を粉砕したグリストとお湯を掛け合わしたお粥状のマッシュを入れても、グリストから染み出る糖分にとって最適の温度63.5℃にならないからだそうです。

その為その日の外気温によってマッシュタンに入れるお湯の温度を調整するそうです。簡単に言うと自分たちバーテンダーが
冷たいカクテルを作る際にグラスに氷を入れ、ステアーをしてグラスを冷やす事と同じ意味と一人納得。

そして、マッシュタンの温度が上がったら、お湯とグリストが混じった状態で投入される。初めて見るお粥状のマッシュからはシリアルコーンに似たいい香りが立ち上り始めました。一度に使われる麦芽は400kg、お湯は1600L。秩父では極力、最新の機器を使うことはなく、全てにおいてトラディショナルな人間の感覚に重点をおき、個々でもそれが行なわれていて、例えばお湯の量をセンサーで止めるのではなく、自分の感覚で止めるようです。そこで門間さんが説明をして下さいました。毎日同じ量のお湯をマッシュタンに入れているから自然にマッシュタンに線が付いてそこを判断材料にするのとの事です。

そして肝心の温度は見事に63.7℃。門間さん的には不満が残る温度だったようですが、理想の温度63.5Cプラス0.2に合わせることが出来る門間さんの力にビックリです。

そしてマッシュを入れ終わったら、マッシュタンに蓋をして30分待ちます。この待つ時間が重要な意味を持ちます。この間にグリストから糖分が出始めるのと、粉砕したハスクが麦汁を濾すろ過材になります。この待つ時間はどんな品種の麦芽を使っても30分は待つとの事です。品種によっては早く糖分が出始めるようですが、やはり、ハスクがろ過材として底に溜まっていないからとの事です。

現在秩父で使っている品種は、イギリス・オプティク種ノンピート、ドイツのブレマー種ノンピートの2種類。暫くはピートを焚いた麦芽を使う予定は無いとの事ですが、今年の八月以降にスタッフ全員でイギリスのクリスプと言うモルトスターにフロアモルティングの練習をしに行くそうで、もしかしたら来年には飯能産のピートを使った自社フロアモルティングの麦芽やピーテェッドモルトを仕込む可能性が十分あり得ると肥土さんが言っていました。

ここで30分経ったので、門間さんがアンダーバックを開け始めました。この間一切肥土さんは口を挟みませんでした。選任をしている人間に全てを任せているそうです。アンダーバックとは、ろ過をスムーズに行なう所です。もし、詰まった場合は、かき混ぜる事により解決するそうですが、質が一気に悪くなる為、絶対にしないとの事です。ゆっくり、じっくり作業をする事により、良質なウィスキーが出来上がると教えて下さいました。

そして綺麗な色をしたワートが取れ始めました。最初、白濁していて、徐々に濁りが取れてきます。そこで肥土さんにお願いをして初めてワートを飲まさせて頂きました。香りは、少し香ばしい麦 クリーム等、お湯(笑)。味わいは本当に甘く最初に連想したのはサトウキビでした。もちろん他の香味も感じましたが、それはおいておきます。後で糖度のチェックをしていました。糖度は12~13度です。

大体、全てのワートを抜き終わるまで1時間30分ほど掛かるそうです。そして、抜き終わったら再度お湯を1000L入れ、2番ワートを作ります。秩父も発酵槽に回すワートは1番目と2番目のみで、合計で三回お湯をいれますが、三回目は次の日の仕込みに廻すとの事です。仕込み水は近くに流れている荒川の水を一度沸騰させ殺菌した物を使います。一日に蒸留所で使用する水の総量は30立方~40立方との事です。やはり蒸留所は豊富に水が使えて良質な水が大切との事です。元来秩父は良質な水が産出していて蕎麦や造り酒屋で有名な町で、日本酒の秩父太郎、武甲山が有名です。

そして取れたワートをヒートエクスチェンジで20-23℃まで冷却をしますがこの際に使用する水も荒川の水です。

続く

#うんちく

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