第四章 Fourth Order フォース・オーダー
タクシーを降りると雪がチラチラ降っていた。
寒いのは好きではないが、やっぱり冬は雪が降らないと感じが出ない。
「雪か・・・」
「いらっしゃいませ」
エンドスケープは賑っていた。店内にはシガーの香りが漂い僕の鼻腔をくすぐった。
「待ち合わせですか?」
「ああ、彼女とね」
オーダーを考えていた。彼女を待つまでの時間の最後の一杯になるはずだ。
すでに3杯飲んでいるし、酔った勢いでする話でもない。
「シェリーソーダをください。」
最後に気持ちを整理していた。
ソーダの立ち上る泡は心を落ち着かせた。
「今日はテタンジェ有る?」
「ご用意してますよ。」
「後でそれでカクテルお願いしたいんだけど」
「喜んで、フレンチ75ですね。」
すこし、さっきアマレットを飲んだ事を後悔していた。
「アマレットって友達以上恋人未満って意味があるんだって」
「ヘルメスってリキュールは商業旅行の神様って意味あるんだよ」
お互いに知ってる知識の言い合いだった。
バーに通いだすとそういった雑学も増えていく。
「お酒って楽しいよね。それぞれ意味があったり、色んな逸話があったりして」
「それを考えて飲むとまた違った感じになるね」
二人のバーでの会話はいつも弾んだ。
彼女の機嫌が悪い時もバーで飲んでると自然と治っていた。
バーという空間とお酒は大事なアイテムだった。
「ねぇ、あれ何て読むの?」
「パルフェタムールだよ」
「何?」
「すみれのリキュールだよ。一昔前は人気のリキュールだったみたいだよ」
「意味あるのかな?」
「さぁ?」
二人の会話を聞いてバーテンダーが教えてくれた。
「フランス語でパーフェクトラブ、完全な愛という意味です。17世紀には媚薬酒として売られていたらしいですよ。」
彼女は目をまん丸に見開いて聞いていた。
「お洒落な話ね。じゃぁ、それでカクテルお願いします。」
無邪気な彼女に僕は笑顔だった。
「ブルームーンです。一番有名ですかね」
「何が入っているの?」
「ジンとレモンと媚薬酒です。」
「ジンなんだ、まさくんも飲めるよ」
「ただ、出来ない相談という意味があります。」
彼女は驚いたようにグラスから一瞬はなれた。
「全然意味が変わるのね」
バーにいる時間は楽しいひと時だった。
#NH