MENU

グレンタレット1966/「もるとや池袋店」高橋克幸さん

グレンタレット1966は、漆黒のフロスティボトルに蒸留年と瓶詰年がローマ数字で表記された、心惹かれる一本だ。映画のクレジットなどでもこの表記は使われているが、蒸留年は「MCMLXVI」、瓶詰年は「MCMXCIII」と記されており、それぞれ1966、1993年を表している。

グレンタレットは1775年に創業し、現存する蒸留所では最も古い。2万8899匹のネズミを捕まえてギネスブックに掲載された、ウイスキーキャット「タウザー」も有名だ。ウイスキーの原料となる大麦を狙って、ネズミや小鳥がやってくるのを防ぐために、蒸留所では猫を飼っていた。

「もるとや」店主の高橋克幸さんは、このボトルがリリースされた頃、西口にあったバー「椿」に勤めていた。まだシングルモルトに傾倒する前で、数年後にモルトバーをオープンするとは思っていない。ところがある日、モルト好きの客と共に京橋まで飲みに出かけた。店の名前は「宝鏡堂」。お互い何杯かレアモルトを飲んだが、グレンタレットのクリーミーで奥が深い味わいに、ほかのモルトの味を忘れてしまった。この出会いが、1997年にオープンした「もるとや」のはじまりになる。

看板の文字は、高橋さんのご長男が小学1年生のときに書いたもの。平たい絵の具の筆を持たせて、半紙に何枚か書かせてみたところ、なかなか味のある仕上がりになった。そんな場面を想像すると、思わず微笑ましくなる。マニアックな店名とバックバーに広がるシングルモルトに、最初は構えてしまうかもしれないが、その文字と高橋さんの飾らない人柄が肩の力を抜いてくれる。

もるとや 池袋店
東京都豊島区東池袋1-8-6 DKY12ビル1F
03-5952-9277
16:00~04:00(土15:00~04:00、日・祝15:00~02:00)
無休

絵:佐藤英行 文:いしかわあさこ
 

#思い出のボトル

この記事を書いた人