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ピトロッホリーの町かどで

ピトロッホリーの町の『A924』に分岐するかどにあるフィッシュ&チップス(白身魚のフライ&フライドポテトのことです)屋で、名物である念願のそれをひとつぶんオーダーした。(ちゃんとそのようなものが存在する。日本の町なかに、鯛焼き屋やたこ焼き屋が存在するように)
 目の前で揚げたものに、ヴィネガーと塩を豪快に振って出してくれる。ひとつぶんは、約25cmのフィッシュが1ケ、プラス、その半分のが1ケ(つまり、1.5ケ)と、ひとかかえのフライドポテトである。フィッシュは、なぜ1.5ケなのか?フィッシュ&チップスを食す機会はこのいちどだけだったので、ほかではどうなのか比較研究出来ずに、疑問は謎のままである。
 さてさて、車を駐車場に入れ、フィッシュ&チップス片手に、メインストリートを散策しようと、意見がまとまりつつあったのに、今度は空いた駐車場がみつからない。
 そのうちに良さんが
「やっぱり先を急いだほうがいいんじゃないかな。」と言いだした。
(このストリートは往復で歩いても20分しか掛からないんだし、少しは「観光」もしたいじゃないの)
「ねぇ、ちょっとだけ、そのヘンに止めるわけにはいかないの?」
「駐車違反して、車を持って行かれたりしたら、とっても面倒なことになるんだよ。僕はドライブしてこの辺をウロウロしているから、フジコサン、ひとりで見てくるといい」
(ふん。20分の間に車が撤去されてしまう確率はいったいどれ程だというのか?ひとりでウロウロだなんて、定番のサランラップや歯磨き粉を買うんじゃないんだから!ふたりでそぞろ歩いて、ああでもない、こうでもないって、・・・それが楽しいんじゃないの!良さんは、エドラダワーで、ゲーム獲得の為に時間を費やしたくせに、わたしのためには、たった20分のウインドウ・ショッピングの時間さえ、割いてくれないってわけ?ふん)
「それで2人がはぐれたりしたら、それこそ面倒じゃなくて。何か他に良い方法は無い?」
「どんな方法が考えられる? それよりも、一刻も早くホテルにチェックインして、パブにでも行こうよ。どうしたって、駐車できる見込みはないんだからさ。観光地の土産物屋なんて、何処もいっしょだよ」
と、その時、いっぱいだった駐車スペースに空きが出来た。しかも、車の流れから見て、わたしたちにその気があれば、わたしたちが駐車するのが理にかなった、ベストポジションである。
「じゃあ、ここに駐車するから行ってくるといいよ」
(ふんッ!ふんッ!ふんッ!)
「さんざん水をさされて、気持ちが萎えでしまいました。 もう、いい・・・」
「この町に来ることは、もう無いかも知れないよ。行ってきたほうがいいんじゃない?」
(ふんッ!ふんッ!ふんッ!)
「観光地の土産物屋なんて、何処もいっしょだもの。はやくパースに着いて、パブに繰り出すことにするわ」
 交渉はこうして決裂した。交渉には20分の時間を費やした。すでにフィッシュ&チップスも冷めてしまった。犬も喰わない夫婦喧嘩とは、こういうものである。

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