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THE MACALLAN & ハイランド牛

 何処の蒸留所でも、見学時間は午前10時から夕方4時30分ぐらいの設定だけれど、12時から2時まではランチ休憩が入るので、わたしたちは、一日に2ケ所制覇することを目標とした。
 きょうの2ケ所めは、1824年、ザ・グレンリヴェットに次いでスペイサイド2番目の政府登録蒸留所として創業した『THE MACALLAN(ザ・マッカラン)』である。マッカランの品質の良さには定評があり、シングル・モルトのロールスロイスとまで言われているのだ。
http://www.whisky-distilleries.info/Macallan_EN.shtml

 A95を北上し、クライゲラヒーでエルギン方面へ通じるA941から折れて、B9102に入る。木立がとぎれると、まさに金色に輝くゴールデンプロミス種の大麦畑と、マッカランの看板が目に飛び込んできた。ここは聖コロンバの丘、夏の風が麦畑をやさしく撫で、ハイランド・キャトル牛が、チェッカーズみたいな前髪の奥からわたしたちを見つめている。ハイランド・キャトル牛は全体が金茶色、前髪の真ん中(前髪があるんです)、鼻にかかる辺りが一番長く、ふさふさと三角形に垂れている。床屋に行った訳でもないのに、なかなかスタイリッシュな牛なのである。いちおう、『ギザギザハートの子守唄』を song for you(ギュウ)してみたが、冷たい一瞥が返ってきたのみであった。

 ところで、「世界には自分に似たひとが、あと2人いる」なんて迷信めいた話があって、わたしはそういうのって、「ネス湖にはネッシーがいる」という話ぐらい本気にしていなかったのに、スコットランドのマッカランの駐車場で、とうとうわたしたちは彼等に出会ってしまった。
 駐車場でドアロックを確認していると、わたしたちの車の隣りに、メタリック・スカイブルーのフォードのフォーカスが止められていることに気づいた。
「あら良さま、わたしたちとおんなじ車よ。案外、日本人がレンタルしてたりしてね」
「その可能性が無いともいえないなぁ」
「あれぇ、マイケル・ジャクソン(ウヰスキー評論家です。歌ったり踊ったりはしません)のウヰスキー辞典があるわ、しかも日本語のよ」
おんなじなのはそれだけではなかった。
地図も、ミネラルウォーターの銘柄も、旅のおともの犬のぬいぐるみまで(!)、持ち物がみんなコピーしたみたいに一緒なので、サスペンスドラマのアリバイが成立しそうなくらいだった。
「どんなひとたちなのかしら?」
「犬のぬいぐるみに感情移入できる、ハートフルでウヰスキー好きな、日本人夫婦」
「それって、まるでわたしたちのことじゃない」
 斎藤夫妻は確かに犬のぬいぐるみに感情移入できる、ハートフルでウヰスキー好きな日本人夫婦であった。特に、スコッチ好きの夫は、恋愛時代から妻となる人にウヰスキーの味を覚えさせ、ハニームーンに絡めて蒸留所巡りをするほどの『熱狂的、計画的、ウヰスキーラバー』であることが判明した。
我々は一目会ったその時から、お互いを永遠の友達、ライバルと認めないわけにはいかなっかた。旅程もほぼ一致していたし、今回の件に関してはきっと二組でひとつというか、なんだか双子の運命のように、多くの部分でリンクするようバッカスが仕組んでいるように想えるのだ。齋藤夫妻もうすうす感づいていたに違いない。我々は、
「じゃ、後日、アイラ島のメインストリートで会おう」と、希望観測的なラフな約束をして別れた。

 さて、レセプションで予約を入れようとしたが、マッカランのツアーでは、ブレンダーによるちょっとしたセミナーも行うため、1回のツアーに10名しかエントリーできないので、休憩を挟んで2クール後になってしまうとのこと。ツアーはあきらめて、ティスティングのみとする。
 『THE MACALLAN 12years』、濃くて艶のある琥珀色。スパニッシュオークシェリー樽由来の馥郁たる甘い香り。キャラメルや蜂蜜、メイプルシロップなど、スィートな感じと、マカダミアナッツ、へーゼルナッツ、モカ~チョコレートのニュアンス。キャラメルコーンや、ハワイ土産のチョコレートなどを連想する。とにかくまろやかで、リッチで豊満。白ではなくアイヴォリー。ミルクではなくクリーム。カプチーノではなく、キャラメルマキァートという感じ。

 どうも良さんの購買意欲に火がついたようである。つい先程、『THE GLENLIVET 21years』を購入したのに引き続き、『THE MACALLAN 30years old』(ブルーの木箱入り)を購入。さてさて、良さんのウヰスキーお買い上げは、帰国時までに、何本になっていることでしょうか・・・。

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