2012.05.19
宿のあるポートリーから、愛車ファルコン号を飛ばすこと2時間半。辿り着いたのは、スカイ島唯一の蒸留所、タリスカー蒸留所です。
(カーボストという場所に立つ)
(熟成庫の壁にもしっかりと蒸留所名が書かれている)
(こちらの写真で分かるように、蒸留所のすぐ前までカーボスト湾が迫っており、辺りには磯の香りが漂っている)
わくわくしながらビジターセンターに突撃。久しぶりにツアーありのディアジオさん系列蒸留所です。
受付で、例のフレンズ・オブ・クラシックモルトのクーポンを出し、ツアーはただでまわれることに。嬉しいことに、タリスカーのロゴがデザインされたピンバッチまでおまけでくれた。
(かなりしっかりとしたビジターセンター)
(蒸留所の歴史に関する展示や、ボトルなどが飾られている)
かなり人気の蒸留所なようで、ツアー客もたくさん。余談ですが、つい最近にタリスカー蒸留所のビジターセンターがリニューアルオープンしたとかで、この写真にあるビジターセンターとは様変わりした様子です。ディアジオのタリスカーに於ける観光への力の入れ具合がうかがえます。
というわけでツアー開始まで20分ほど。「先に飲む?」と訊かれたので、ツアーの待ち時間に先に試飲を済ます。スタンダードの10年ものだったので、とても馴染み深く飲み慣れたモルトのはずなのに、ここで飲んだタリスカー10年はいままでにないくらいに美味しかった。
これまで幾つもの蒸留所をまわって、その土地その土地で地元のウイスキーを飲んできたわけだが、こんなにも美味しく感じたのは初めて。元々好きなモルトではあったのだが、改めて「タリスカーってこんなに美味しかったっけな?」と驚いてしまった。
そんなこんなでツアーがスタート。が、しかし、やはりディアジオさん。内部の撮影はNGということで、仕方がない。つらつらつら〜っとツアーを終えて、改めて蒸留所の周りをうろちょろします。
(ツアー中、唯一写真撮影可だったのがこちらのウェアハウス。ガラス越しに多くの樽が眠りについている)
外観の写真を撮りながらふらふらします。
(蒸留所から湾へと伸びる小川。水面が鏡のように反射していてとてもきれい)
(ビジターセンターの裏側にまわっていくと、人気のない関係者専用の搬入出用エントランスも)
ツアーのルートを思い出しながら、なんとかスチルだけでも撮れないかなーとふらふらしていると、スチルハウスのドアが開いているのを発見!ラッキー、と思いつつ中をのぞくと、ちょうど次の回のツアーがスチルハウスにさしかかったところで、中には大勢の人がいる。こっそりかげに隠れて様子を窺い、そのツアーがスチルハウスを去る頃にそーっと侵入。一枚だけ写真を撮りました。
(分かりづらいが奥の赤い2基が初留。手前の青が再留。角度の問題で写真には写っていないが、再留釜は3基あり、2:3と変則的になっている)
タリスカーのスチルはとても個性的。初留、再留が2:3と変則的な数になっているのは、かつては3回蒸留を行っていたから。さらにスチルの形状として面白いのはラインアームの角度。再留釜のラインアームはネックからほぼ90度の角度で曲がり、地面と水平に伸びているのに対し、初留釜のラインアームは直角にぐねぐねと曲がりくねっている。直角なラインアームといえばグレングラントのそれを思い出しますが、タリスカーはそれよりもさらに曲がりくねっている。
さらに初留釜で面白いのが、ラインアームの途中で液体に戻った蒸留液を、蒸留釜本体に還流するというシステム。
(非常に分かりづらくて申し訳ないが、こちらの写真でラインアームが下に向かってぐいっと曲がった後、壁を通り抜ける直前に細いパイプが下に伸びているのが確認できるでしょうか。こちらの細いパイプが蒸留釜本体に向かって伸びて再び蒸留されるというシステム)
このシステムを採用しているのはスコットランド全土で、ここタリスカー蒸留所だけ。スプリングバンクなどの2回半蒸留なんかも思い出させるような蒸留方法で、なんとも興味深いシステムです。
さらにラインアームが壁を突き抜けていった先も興味深い。
(冷却は伝統的なワームタブ方式)
やはりこちらの写真では分かりづらくて恐縮なのですが、全部で5槽あるワームタブの内、手前の3槽が再留釜用、そして注目すべきは奥にある初留釜用の2槽である。
スチルハウス内でもあれだけぐねぐね曲がりくねっていた初留釜のラインアームですが、壁を通り抜けてワームタブに入る直前、さらにもう一回大きくぐね〜んと山を描いてから垂直にワームタブに接続されています。本当に面白い。
さらに、個人的に見て欲しいポイントとしては、そのラインアームの色。スチルハウス内は観光客向けにぴっかぴかに磨かれた銅色をしているのですが、一歩外に出て、眼のつかない所に行くと、ご覧のように真っ黒。これはなにもタリスカーが掃除をさぼっているとかそういうわけではなくて、稼働中の蒸留所は基本的にこんな色をしているのです。ぴっかぴかなのがおかしいくらい。
そんなこんなですっかり大満足。再びポートリーまで2時間以上かけて帰るのでした。
#Talisker