2012.06.01
旅に出てからまる2ヶ月が経過したこの日。もうすっかりアイラで迎える朝にも慣れきっており、しかもこの日はボウモアのツアー以外に予定は無い。ゆっくりと起床して、チーズとトマトを挟んだサンドイッチで朝食を済ませると、ホステルを追い出される10時までゆっくりと朝を過ごし、バスでボウモアまで向かいます。
とは言っても、この日のツアーは14時から。さすがに朝一ではどこのパブもやっていないので時間を潰そうにも、先立つものがない。
しばらく町の中央にある広場のベンチに腰掛けていると、なにやら足下の覚束ないおっちゃんが近づいてきて「そこのスーパーでウイスキーを買ってきてくれんかのう」と私の方に10£紙幣を差し出してくる。
何事かと一瞬訝ったが、そのおぼろげなまなざしと怪しすぎる呂律とで「なるほど。このおっちゃん呑んべえ過ぎてもう酒売ってもらえないんだな」と状況を理解した私は「ソーリー、アイキャント」と断りを入れる。
しばらくは食い下がっていたおっちゃんも、私が「ノー」と強い意志を込めて断ると諦めたようで、他の人に同じように声をかけていた。
そうこうするうちにおまわりさんがやってきて、もはや常習なのだろう、慣れた態度でおっちゃんを座らせると「大丈夫?」と落ち着いた様子でなだめていた。
朝っぱらから、さすがウイスキーの島である。
おっちゃんの追求を躱した私は、そのまま蒸留所の裏手の方へ。中にはまだ入れないので、表の写真を先に収めておくことにします。
(湾に建つ蒸留所。とても絵になります)
(建物に近づいていくと、壁の下から温水が湾に流れ込んでいた。冷却に用いた海水を再び海に戻しているのだ)
(そのまま蒸留所の裏にそびえる丘にも登ってみる。写真右手にボウモアの町が広がっている)
町に戻ると、アイラショップやケルティックショップと看板が出ているお土産屋さんに立ち寄って、商品を物色するなどして時間を潰す。
ようやく時刻が12時を回ると、ぽつぽつとパブが開き始めるので、それを待ち望んでいたかのように一軒二軒とワンパイントをゆっくりやってようやく迎えるツアーの時間。赤ら顔を浮かべながらボウモア蒸留所へ向かいます。
(どーん)
ツアーが開始するとまず連れてこられたのがこちらの部屋。
(モルティングルーム)
前回の(フェス編)の記事でも書いた通り、蒸留所内の設備はオープンデイの時に見せてもらえたのですが、今回改めてツアーを申し込んだ大きな目的の一つが、このモルティングルーム。
ボウモアは今では数少ないフロアモルティングをやっている蒸留所なのです。
(スコップでかき回すイメージが強いけど、ここではくわのようなものを引いていた)
(発芽したモルト。いい香り)
フロアモルティング体験を終えた後は、そのまま今度はキルンの中へ。まさしくウイスキー製造の順番通りにルートを進みます。
(パゴダ屋根の中に入るのはなんだか不思議な感じ)
(足下の穴を通ってモルトは次の工程へ進みます)
(キルンから出てきたモルトはいったんモルトビンに貯められます)
(シンプソンズ産のモルトと、ボウモア産のモルトはしっかり分けられていた)
(粉砕された後はマッシュタンへ。ウッディな雰囲気の、ぴっかぴかなマッシュタン)
(はて?これはなんだったっけな?マッシュタンの隣の部屋にあったのだが…。)
(蓋を開けると湯気がもくもく。管理しているコンピュータも見えます)
(ウォッシュバックは木製のものが6槽)
(ユニークだったのが、それぞれのウォッシュバックに歴代のオーナーの名前入りプレートが掲げられているところ)
(「SUNTRY」もいつか名前を掲げるのだろうか)
(そしてスチルハウス。手前の2基が初留釜で奥の2基が再留釜。一番奥の再留釜だけ、コンデンサーが壁を突き抜けた屋外にある)
(角度を変えてもう一枚。それにしてもぴっかぴかである)
(スチルハウスからウェアハウスまで移動する間の風景。建物の間から海がのぞくのがとてもいい感じ)
(ウェアハウスの中には1958ビンテージの樽も!うっひゃー!)
そして最後は恒例の試飲。ここからがこのツアーの面白いところで、このツアー。ボトルの名前に由来して「ダーケストツアー」と銘打っており、試飲は普段使っていないウェアハウスの中で真っ暗の中で数種類のモルトやカクテルを楽しむという趣向なのだ。
席に着くとまず目隠しを手渡され、それを装着。ただでさえ薄暗い室内だったのに、目隠しをすると完全に真っ暗である。まずはシンプルにダーケストの試飲からスタートし、数種類のチョコレートとのマリアージュや、ホットココアウイスキーやラスティネイルなどのカクテルも。視覚を奪われた状態で楽しむウイスキーはまた普段と違った感覚で楽しかった。
明るくなってからは、普通に数種類のモルトを飲み比べ。
(左から順に、2012年のフェスボトル、テンペスト、クラフトマンズコレクション、100プルーフと4本飲み放題!テンペスト以外は目にする機会も少ないボトルたちです)
こんな機会もめったにない。ツアー料金は私にとってはお高めの15£も支払っていることだし、とここぞとばかりに飲みに飲む。
終了することにはもうふらっふらで、早くも頭痛がし始めるほど。それでも美味しいウイスキーたくさん飲めて大満足!ツアー内容もとても充実していて大変に楽しめました。
#Bowmore