MENU

119. ストラサーン / Strathearn

2017.05.23

 ピトロッホリーでの朝の散歩を終えた後は、次なる目的地のためにまずは電車でパースの街まで下っていきます。

 次なる目的地は、2013年にオープンしたばかりの新興蒸留所、ストラサーン(ストラスアーンと表記することも)。前回スコットランド一周蒸留所巡りの旅をしたのが2012年だったので、そのあとにできた蒸留所です。

 こちらの蒸留所。オフィシャルのホームページにもあるように「Probably Scotland's Smallest Distillery」となっております。ホームページを見てみても、ツアーはやっていそうだけれど、それ以上の詳細は分からない。仕方なしや、と直接「ハーイ。蒸留所見学したいんだけどできる?」とメールを送ったところ、創業者であるトニー・リーマン=クラークその人から丁寧な返事がくる。
 そこから日程の調整や到着時間など細かく伝えていき、最終的には「何時にパースの駅に着く?その時間に迎えに行かすよ」と、訪問を了承してくれたばかりか、お迎えまで来てくれることに。まだ会ったこともない人に対して、このホスピタリティは感動した。

 そして当日。
 大きな荷物を抱えて、時間通りにパースの駅に到着した私。メールによると「駅を出た駐車場のところで待ってるよ」とのことだったのだが、残念ながら私は彼の名前しか知らない。一応こちらの特徴として「青い馬鹿でかいバックパックを持った、長髪の日本人」ということは伝えていたので、相手から見つけてもらうのを待とう、という作戦である。
 まぁただでさえ目立つ巨大なバックパックに、東洋人もそんなにはいないだろうから、簡単に見つけてくれるだろう、と思っていたら果たしてそうで、クライブという名の男性がすぐに私を見つけてくれた。

 迎えに来てくれたお礼と、馬鹿でかい荷物のことを詫びて車に乗り込みます。パースからストラサーン蒸留所までは30分強の道のり。クライブとやいのやいの言っている間に、蒸留所に到着です。

(石造りに、キルンもある生産棟。キルンはもちろん飾りではあるけれど)

 クライブに、リアムという髭もじゃのお兄ちゃんを紹介され、ツアー開始。ツアーといっても、生産棟と熟成庫だけのシンプルなものです。

(雑然とした印象の生産棟。小さい建物の中に全てが詰まっている)

(入り口入って左手側には、アランビック型のスチルが2基)

(そして右手には可愛らしいスライムみたいなサイズ感のスチルが2基。こちらはジン用のスチル)

(ピーテッドの原種も作っている模様)

(スチルハウスの裏には、馬の飼われている納屋がある)

(そしてウェアハウスへ)


(パノラマ写真も。小さな建物の中に、小さな樽がたくさん)

 ツアーを終えたら、お待ちかねの試飲タイム。
 2013年にオープンした彼らは、まだ最初のウイスキーをローンチしたばかり。その代わりとばかりに、ジンやラム、カルバドスなど、様々なアイテムをリリースしている。また、詳細は書けないけれど、彼ら曰く「Whisky in progress」というスピリットドリンクさえ作っていた。この商品に関しては、彼らもリリースするつもりはないらしく、あくまで様々なスピリッツを作る過程で、実験的に作り上げたものなんだそう。これがまた美味しかったのだけれど、ウイスキーという制約の中では出せないだろうなぁという商品だった。

(放っておいたら試飲が出るわ出るわ。左手側にある色の濃いボトルが、件の「Whisky in progress」。商品の解説をしながら色々試させてくれたリアムは、一つ一つに「Amazing!」とか「Lovely!」とかかなり派手な自画自賛を添えながらあれやこれや教えてくれた)

 たくさん試飲させてくれたアイテムの中でも、とりわけ興味を引いたのがジン。
 今では日本でも多くのクラフトジンが扱われ、その魅力が皆さんの元にも伝わっているかと思うのですが、当時私は、いわゆる「新興ウイスキー蒸留所が作るジン」というものに対してかなーり懐疑的でした。新興蒸留所がウイスキーの熟成を待つ間、熟成の必要のないジンを作って資金を稼ぐ、という側面がある以上、どうしてもジンは「ついで」の商品というイメージがあったのです。
 そのイメージは、彼らの商品を試しているうちに完全に拭われました。
 以前に行ったエデンミル蒸留所でもそうですが、彼らの中に「ついで」という考えは一切ありませんでした。あるのは、チャレンジングな姿勢と、柔軟なアイディア、そして美味しいものを造るという情熱だけでした。リアムの派手なアクションは、私にそれを伝えるのには十分でした。

(散々歓待してくれた上に、最後はお土産のミニボトルまでくれた。左が「ヴァージンアメリカンオーク3年2ヶ月」右が「ポートカスク3年3ヶ月」)

 お礼を言って蒸留所を後にします。
 帰りはまたクライブがパースまで送ってくれました。本当に至れり尽くせり。最後にはパースの美味しいご飯が食べられるパブ情報までいただいて、大満足。帰りの車内で、クライブは「昨今のウイスキーブームで新しい蒸留所はたくさんできてるけど、その中で生き残るのが簡単だとは思わない」みたいなことを言っていた。その通りだとは思うけど、ストラサーンは是非とも生き残ってもらいたいものだと強く思いました。

#Strathearn

この記事を書いた人