フェリーの発着場所であるストーノウェイ(STORNOWAY)からおよそ1時間。
シングルトラックなど走りにくい道をくねくね進んだ先に目的の蒸留所はあります。
実はこの蒸留所のことは、前回のスコットランド訪問の際に、新聞で知りました。
宿泊先のグラスゴーのホテルで読んだ新聞に
「西の果ての島で、モルトウィスキーが誕生した」
という見出しと共にこの蒸留所のことが紹介されていました。
交通も不便で、名も知らない蒸留所。アイラやオークニーには行くことは有っても
この蒸留所には立ち寄ることはないと思っていました。
しかしながら、この蒸留所の存在が頭から離れず、今回念願の訪問となりました。
目の前にはハッとするほど美しい遠浅の海岸が広がります。
この付近はUK-NO.1の砂浜が各所にあります。遠浅で白く、実に美しいです。
蒸留所入り口にあるシンボルマーク。バイキングをイメージしています。
ピートが山盛りに詰まれていました。
辺境の地にある蒸留所アビンジャラク(ABHAINN DEARG)。別名RED-RIVER-DISTILLERY。
アビンジャラクとはゲール語で赤い川の意味。
目の前に流れる川がピートで赤く見えるようです。
実際には赤と言うより茶色っぽいです。
というより、スコットランドの川は皆同じに茶色いので、どの川も同じような雰囲気です。
正直、非常に辺鄙な場所です。かなりの好き物でなければ訪ねる事も無いでしょう。
ちなみにゲストブックを見ると、日本人は3人しか訪ねていませんでした。やっぱりねえ。
この蒸留所は2008年に操業を開始。
本年10月にファーストフィル(Frist-Fill)をリリースする予定です。
蒸留所の規模はとても小さく、マイクロディスティラリー(Micro-distillery)という
名が相応しいです。
ツアーなどは特に無く、「フラッと立ち寄ってくれればOKだよ」的な運営。
「隠すところは無いから全部写してくれ。触れれくれ。飲んでくれ」ととても熱いです。
Mash-Tunは小さいながら2器あります。小さいながらも機能的な仕様だ。
小さいだけにメンテナンスが大変そうです。
Wash-Backも小ぶりのものが2器あります。アメリカンパインで作られています。
かなり本格的な仕様です。
Pot-Stillと冷却器。真ん中にある銅製のドラム缶のような筒が蒸留器。
そこから個性的なネックが続き、冷却器に吸い込まれて行きます。
今まで見たことも無い形状に驚きです。
容量も小さいため、抽出されるスピリットも非常に小規模です。
リザーバーも木製。「これが俺のこだわりだ」と言っていました。
早速出来たてのスピリットを頂きます。今出来たての一杯です。
とても甘く、香りが豊か。ちょっと甘目が強いかな?
蒸留器など、全ての施設が小さいので、味がストレートに出てしまうためか?
ゆっくり飲んで至福の時間を過ごしました。
Warehouseは事務所の横にあります。赤は初年度のもの、緑は翌年2009年のもの。
本年度は白色を採用しています。
モルトウィスキーは最低でも3年間の熟成が必要と法律で定められています。
従ってこの蒸留所のモルトを飲めるのは、今年度末のようです。
今頂けるのは、熟成2ヶ月の「Spirit of Lewis」。味は非常にまろやか。
2ヶ月でここまで変わるのに、驚きです。
ノンチルなので結構な濁りです。この濁りが濃厚さを引き立てている感じ。
これは非常に期待できますね。
今の日本のモルトブームやハイボールスタイル、日本の食文化やライフスタイルなど
何だかいろいろな話題に関して雑談していました。とても楽しかったです。
ピックアップトラックで眠る愛犬。
毎日ストーノウェイからここまで1時間かけて通勤しているらしいです。
あの道を毎日通っていると思うと大変さが分かります。
それだけに、この蒸留所の成功が楽しみだ。
「俺は酒が好きだ。好きだから自分で作りたくなった。
むかしは副業としてサーモン養殖を行っていたが、今ではウィスキー作り一本。
大きな蒸留所の有名なモルトとは確かにおいしい。
でも自分で作った「子どもたち」はもっとおいしい。
ドンドン日本で宣伝してくれ。そして、ドンドン日本人が訪ねてきて欲しい。
とても辺鄙な場所だけど、おいしいお酒がお前をもてなすぜ」
By Marko Tayburn
とても熱い時間を過ごす事ができました。
さあ、日が暮れる前に今日のもう一つのメインディッシュを頂きに行きましょう。
こんな辺鄙な島に来た理由。一つはDISTILLERY、もう一つはSTONEです。
#2010 夏 Scot return