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ウィスキーを愉しむ、それがすべて

 今日、出張先で同僚に
「GIANさんの名前が雑誌に載ってましたよ。」
と言われた。

 雑誌に載るようなことを下記憶のない私が怪訝な表情をしていたら、「ウィスキーワールドっていう雑誌しってるでしょう」と言われうなずいた。良く話を聞くと、ウィスキーエキスパート試験に関するアンケートの返事が雑誌に使われたらしい。帰ってから早速調べてみると、確かに私の名前が載っていた。ほんの一文ではあるが、これからウィスキーコニサーを受験する方に向けた一言として、
「ウィスキーを楽しむために勉強してほしい」
と書いてあった。
 そうか、そんなこと書いたんだっけ。そんなに考えずに気軽な激励のつもりで書いた一言ではあるが、意外に的を得た言葉のように思える。
 30歳を過ぎて、割と気軽にバーへ足を運べるようになった頃は、行きつけのバーのマスターが薦めてくれるシングルモルトを言われるがままに飲んでいた。酒が強いだけであまり味のわかっていないドランカーだった。そんな頃、バーの若いバーテンダーがショット1万円のスコッチを飲みに行きませんかと誘ってくれた。そのスコッチは、味のわからない私でもお気に入りのモルトで確かBowmore1937だったと思う。1万円の味がどんなか知りたくて、いっしょに飲みに言った。クリスタルのスニフターに一万円のショットが注がれた。グラスを持って鼻を近づけたときに私の中の何かが変わった。琥珀色の液体を口に含んだとき、自然と笑みがこぼれた。これがスコッチか。こんなすばらしいものをただ飲んでいては申し訳ない。
 それから、ウィスキー関係の本を漁り、SMWSにはいり、土屋守著「モルトウィスキー大全」にめぐり合い、スコッチ文化研究所にはいった。一万円のモルトを飲ませてくれたバーとは、転勤した今でも懇意にしてもらっている。ウィスキーのことを知り、ウィスキーの味わいを知るにつけ、ウィスキーが楽しくなった。ウィスキーを楽しく飲むためにウィスキーを知りたくなった。その結果がウィスキーコニサー資格だった。残念ながら今年のウィスキープロフェッショナル試験は不合格だったが、来年こそはと勉強を続けている。勉強をしているとさらに疑問がわいて来て、その答えを見つけると無性にウィスキーが飲みたくなる。今はその繰り返しである。
 ウィスキーを楽しむために勉強してほしい。ウィスキーコニサーを目指す後輩へのエールというよりは、自分の原点になる言葉である。
 今日も、一日頑張って働いた自分に、ウィスキーを一杯(いや、いっぱいかな)、ご褒美にあげよう。

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