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パイナップルウイスキー その1


昨年、我が家にパイナップルウイスキーを3本並べる機会に恵まれた。

中央はモロゾフ酒造株式会社の「クリスタルウイスキー」。

東邦酒造株式会社が社名をモロゾフ酒造株式会社へ変更した1960年6月から、
さらにモンデ酒造株式会社へ社名変更する1972年7月までの期間に製造販売された物。

両サイドの2本は、昨年ボトリングされたプライベートボトルの、
モンデ酒造のウイスキーで、シングルモルトとブレンデッドウイスキー。


今回はこの中のシングルモルトをテイスティングしてみようと思います。

このシングルモルトウイスキーは2つの樽のモルト原酒がブレンドされており、
1樽は1982年〜2008年の26年もののモルト原酒。
もう1樽は1983年〜不明(途中タンクへ移された)の年数不明のモルト原酒。

アルコール度数は64度。この64という数字にボトラーのこだわりがある。
200本弱のボトリングだが、一般的な販売は原則として行わなかった。

香り
蜜蝋。アロエの葉を噛んだ時のジューシーな渋味と甘味。
みかん様のこってりとした柑橘系の甘酸っぱさ。
酸味が豊かなピート。強過ぎるエステルはセメダインの有機臭。
軽く焼け溶けたゴム。イグサの青臭さ。
奥の方に蜂蜜、パイナップル、グレープフルーツ、ビスケットを感じられる。

味わい
しっかりとしたピートの中に畳をかじったかの様な青臭さ、
海臭さを抜いたホヤ貝の渋味と旨みや甘味、
そして出来立てのゴム製品が、口の中で一気に広がり、カルシウムを感じつつ、
2m以上はあろうかと言う長いゴムチューブが鼻からじっくり抜けて行く。

加水後の味わい
ゴム臭は衰えないが、有機臭が和やらぎ、墨汁、錆び、煤、レモン、アザミ(花)の香り。
味わいはカルシウム的な味わいを持ち、スモーキーで辛味が増すが、
次第にオレンジジュース系清涼飲料水の様な、透き通った甘味が表れてくれる。

後味
強烈なゴム臭さが消え、無糖のシリアルを食べた後の
ビターながらに旨い穀物様がしっかり残る。
そして軽いタンニンとともに適度に続く。

総評
「みかん、畳、溶けたゴム」のモンデの原酒らしさがしっかり表れているシングルモルト。
2008年にリリースされた3つのモンデのシングルモルトの中では
トップのジューシーな香りを放っている。
加水後の味わいに「何とか収まってくれた」という安堵感があるのはありがたい。

昨年3つのモンデ酒造のシングルモルトを飲む事ができ、しばらくして思った事は、
モンデのモルトは秩父ニューボーンNew American Oak Hogsheadの味わいプラス、
ピートで燻したモルトの方向性に近いという事。

独特の臭みがありつつも、麦の旨みをどこかで感じられずにいない、
不思議な味わいを持っている。
ただ、ゴムと青臭さという万人ウケしない個性があり、
他人にお勧めするにはちょっと辛いかもしれない。

#モンデ酒造

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