富士御殿場蒸溜所 Pure Malt Whisky aged 20 years
名古屋市にある酒店「秋田屋」のオリジナル(プライベート)ボトルで、
2種類発売された内の1種類。
キリンシーグラムの時代の物なので、それなりに古いらしい。
輸入モルト原酒を国内でブレンドしたので、
これも「富士御殿場場蒸溜所」ブランドのジャパニーズウイスキー…。
オフィシャルコメント
富士御殿場蒸溜所に眠るあまたある原酒の中から
理想の味わいを実現する20年の熟成を経た良質な原酒のみを厳選し、
特別に壜詰めしたものです。
中部地区の限定された酒販店のみで販売される希少なウイスキーです。
二度と出会うことのできない、今回限りのこの特別な味わいを
どうぞゆっくりとお楽しみください。
富士御殿場モルト原酒の特徴となる「果実香豊かで柔らかな口当り」を
香味の中心にすえ、スモーキーなピート香を持つ力強いモルト原酒をバッティング。
フルーティーさと深い重厚な味わいが、バランス良く調和しています。
小さめの樽で20年の永きに渡り丁寧に熟成されたこの原酒は、
長期熟成から生まれる華やかな香りとまろやかな口当たり、
モルトウイスキー本来の力強い味わいを楽しむことのできる珠玉の逸品です。
二つとないこの個性を、どうぞご賞味ください。
[テイスティングノート] マスターブレンダー荻野一郎
Top note(トップノート/飲む前に感じる香り)
熟した果実のような深く濃厚な香りが、華やかに香り立ちます。
Impact(インパクト/口に含んだ瞬間の香味)
重量感をともなったなめらかな口当りが口中に広がっていきます。
Palate(パレート/口中番)
長期熟成に由来する熟した果実の香りや、
はちみつを連想させる甘美な香りが広がります。
やがて、ピート香やバタークッキーのような香ばしい香りが現れてきます。
After taste(アフターテイスト/飲み干したあとに感じる香味)
深い果実香と香ばしいピート香が調和し、長い余韻を楽しむ事ができます。
ソムリエの木村克巳氏によるテイスティングノート
色調:赤みを帯びたトパーズ色、森のハチミツを想わせる輝きがみられる。
香り:香ばしさと森の香りに甘さが融合した、まあるい優しさ。
<トップノーズ>
深みある印象。木質とナッツ香、炒ったアーモンド、焼き栗、
メープル、カカオ、杏仁が上にあり、
その下層からジュニパーベリー、カルダモン、オールスパイス、
わずかな丁字を想わせるスパイスが浮き上がってくる。
<ミドルノーズ>
数十秒経つと、ドライプラム、プルーン、ドライブルーベリー、レーズンなどの
ドライフルーツ香が逆転して涌き上がり、
クリームキャラメル、バタースカッチなどの甘い香りとトップノーズで感じた香りとが、
一体となって大きく拡がってくる。香りの中のアルコール感は極めて少ない。
飲み心地・味わい:なめらかで深く多彩に拡がるフレーヴァー。
まるく、なめらか。ハチミツを想わせるとろみの中に潜んだ、
シャープさが楽しく拡がってゆくと、栗やメープルシロップ、アーモンド、干しバナナと
牧場の焚き火、石炭ストーブ、燃える暖炉の煙っぽさがどこか懐かしく香ってくる。
サラサラした潤いのあるドライなフィニッシュが鮮やかだ。
残り香:お香(きゃら・沈香)と森林の空気を想わせる幽玄な風合いがたなびく。
二口目、三口目と飲み進む内にウイスキー本来のなめらかさが実感できる。
楽しみ方:
<グラス選択>
ストレートなら; 小ぶりのブランデースニフター
オンザロックなら; 口の薄いオールドファッション
ソーダ割りなら; 長細いコーリンズグラス
<相性の良い料理>の一例
ストレートなら; スモークドアーモンド、ハバナ産ミニシガリロ
オンザロックなら; スモークチーズ、ビーフジャーキー、ロッキーサーモン、鮭とば
ソーダ割りなら; スモークドサーモン。ハム類、メザシの素揚げ、
ししゃも炭焼き、鰤の照焼き、鯖の味噌焼き
と、2人のオフィシャルコメントがあるモルトというのも珍しい。
しかしまぁ、ソムリエの表現力の広がりや深さといったら、凄い!
香り
20年オーバーを素直に感じられる、ライチや熟した梨の
東洋的なトロピカルなフルーツと、練乳掛けミカンといったフルーツ香。
熟していながらもサッと抜ける軽やかで爽やかな樽香にセメダインの揮発。
クルミの甘く香ばしい香り。そして線香の様な軽いピートがアクセントになっている。
また鼻の粘膜にこびりつく甘い香りはonce upon a timeに通ずる
独特なモルト(ストラスアイラ?)である事を主張している。
味わい
エステル(有機溶媒)とは違う、御殿場独特の、嫌味な味わいがある。
大抵の御殿場モルトではアクセントになっていて気にならない程度だが、
今回のモルトは強めで個性的。
しかしエステリーをフルーティーと誤解しかねない味わい。
ライトボディで、一瞬、桃の缶詰めの甘味が来たかと思うと、
すぐにブラックコーヒーの苦味に変わり、
また「仁(果実の種の中の柔らかい部分)」の渋味を感じ、ドライ。
気持ち程度のチョコレートのコクや、石油ストーブやボイラーの焦げた臭いもある。
加水後の味わい
仁の苦味もしっかり出ていて熟成感がある、甘さ控えめの梅酒の様なフルーティー。
そしてエステルも出てきて、このモルトの持つ素質を素直に感じ取ることができる。
後味
「仁」の持つ渋味とわずかなフルーツ香の混在するタンニンの様な
重い味わいがしっとり残る。しかしドライなために長くはない。
総評
香りにはシーバスリーガルやエバモアにも似た感覚があって、
キリンのジャパニーズではないモルトという事がハッキリ分かる。
比べてはいけないのかもしれないが、「これは!」と、美味しさに驚いた
富士御殿場シングルモルト1981(21年)とは明らかに違っていて
スモーキーも甘味もボディの厚みも少ない。
熟成年数に期待し過ぎているのかもしれない。
しかし物は考え様で、しっかり熟していながらも
夏にスッキリと飲めるタイプのモルトだと考える事もできる。
ドライな味わいを冷やして飲んでも良いかもしれない。
#japanese whisky