2012.05.25
ブナハーブン蒸留所を出て、向かうは本日の宿、バリーグラント・インである。ポートアスケイグからボウモアに至る道程の、ちょうど中間らへんに位置するバリーグラントまではおよそ3マイルほど。それプラス、ブナハーブンまでの壮大な道草分が4マイルほどあり、つまり都合7マイル、11キロ強の道程です。大きな荷物を背負ってブナハーブンまでの往路を歩ききっていた私にとって、少しくハードな距離ですが、そこはまだアイラへの想いでなんとか乗り切ります。
(青空の下、伸びる一本道をひたすら歩きます)
しっかし、 歩けど歩けどひたすらの一本道。好天も恵まれ過ぎては苛烈な陽光となりうるもので、この段になって私は着ていた上着を脱ぎ去り、Tシャツ一枚になって行きます。
日差しを苛烈に感じ始めたのには、単純に天気がいい、という理由の他にもう一つ理由があって、その理由というのが水がない。持ち合わせていたペットボトルの水がブナハーブン行きの中途で底をついてしまい、蒸留所で水でも売ったりしてないかな、と思うも、残念ながらそのようなショップはなく、空のペットボトルになにか水でも、と思うも、慌ただしい蒸留所の雰囲気に押されそのまま出てきてしまったのである。
吹き出る汗を拭いながら、少しでも体内の水分を節約するように意識しながら歩きます。
(そんな中でも、ご覧のようなディアジオ社のCMや)
(イースト会社の駐車場に停まっていたブルイックラディ・カーを発見した時はテンションがあがった)
所々でテンションはあがるものの、いいかげん体力も限界に近づいてきているのを感じます。「みず、みず」とうわごとのように呟きながら、バックパックの肩ベルトを握りしめ、なかば項垂れたようになりながらも足を引きずっていきます。「次に後ろから車がやってきたらそれがトラックだろうが戦車だろうが親指を立てよう。この際バイクでもいいんじゃないか」と、ぼんやりした頭で考えはじめたそんな頃。ようやく、目的のバリーグラント・インの看板が見えてまいりました。
チェックインを済ませ部屋に入ると、なんの迷いもなく水道を捻ってそこから滂沱と流るる水をコップにすくい、一杯二杯、三杯四杯とがぶがぶいただきます。頭も痛くなってきたし、本気で熱中症一歩手前くらいの感覚があったので、ここは徹底的に水分を補給。万一体調を崩して、これからのフェスが台無しなんてなったらとてもじゃないが立ち直れません。そのままの勢いで今度はシャワールームに飛び込むと、水を頭から浴び、ついでに着ていたシャツやなんかも洗って、気が済んだら部屋で一人、素っ裸で放心。
次に我に返ると、フェスのプログラムを取り出してにやにやし始めます。
(にやにや)
これによると、今日はボウモアで、フェスのキックオフパーティが開催されるとのこと。本当は行こうと思っていたのだが、行ったら行ったで帰りのバスが無い。当初は行くだけ行って帰りはゆっくり歩いて帰ってくればいいんじゃない?とか考えていたのだが、この体調では無理をしないに限る。それは諦めて、半乾きのシャツのままホテルのバーに出向きます。
さすがはアイラのホテル。バリーグラントという、言ってみたら中心地からはだいぶ外れた所にあるホテルにもかかわらず、モルトの種類は豊富で、そしてお客さんたちも皆一様にモルトを楽しんでいる。フェス期間なのであたり前と言えばあたり前なのだが。私のように海外から来ているお客さんも多いようで、隣の5人組はドイツから、その奥の2人組はスウェーデンからと、なんともグローバルであった。テイスティングメニューなんかも用意されていて、皆グラスの香りを嗅ぎながらあーだこーだ言い合っていて、ホントにウイスキーラバーしかいないような雰囲気。私も、是っ非その流れに交わらんとしてメニューを見るのだが、どうも相場よりも割高な印象を受けてしまい、結局モルトを諦めて、しかし折角のアイラなので、と妙な落とし所としてアイラエールをいただきました。
(しかもドラフトではなく瓶。アイラエールも5、6種類あった。その中で私が選んだのは、ウイスキーでも馴染みのあるフィンラガンの名前が冠されたエール)
(バックバーにはアイラモルトを中心にボトルがずらり)
(ごはん。ポークにウイスキーとマスタードのクリームソースがかかっている。ウイスキー感はなかったけど美味しかったー)
モルトの楽しみはまた明日以降に持ち越しということにして、ゆっくりとアイラエールと食事を楽しみます。
(パブの中では、わんこが自分のしっぽを追いかけてくるくる回転していたり…)
(表では、にゃんこが自分の背中を地面に擦り付けながらごろごろ回転していたりしていた)
食事を終えるとあとはゆっくり。明日からのフェスを思い切り楽しむための計画を立てながら、部屋ですごしました。