MENU

イングリッシュ・ブレイク・ファースト

  外の明るさに自然に目覚めた。ベッドサイドのスダンドの灯りに引き寄せられて、小さな羽虫がたくさん死んでいる。一夜限り、何かを求めて集まり、たぶん適わず、短い命をまっとうしてしまった。小さいころに田舎でよく目にした光景だ。忘れかけていた、容赦ない自然の摂理のようなものを想い出す。

 身支度を整え、階下へ降りる。階段わきの野の花は取り替えられ、部屋の隅々に、グリーンをたっぷり含んだ朝の空気が取り込まれている。
「貴方たち、よく、眠れて?」
「ええ、とっても」
「それは何よりよ。ベンジンは、もう、うさぎ獲りに行っちゃったわ。(ウインク)さあ、ブレイク・ファーストの用意が出来ててよ。席につくといいわ」

 サーブの女の子が(彼女はこの季節のみ、住み込みでアルバイトをしているそうである。夏の菅平高原とか、冬の蔵王高原などにも同じようなシステムが有りますね)薬局の薬剤師が、薬の種類と効用について説明するときみたいに、ちょっとだけ命令を帯びた、語り含めるような話し方で、イングリッシュ・ブレイク・ファーストのメニューと、そのオーダーの仕方を説明してくれる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

*オレンジジュースかアップルジュース

*シリアルとミルク
5~6種の様々なタイプが用意してあり、蜂蜜やドライフルーツなどを加えたりして、自分の好みにアレンジする。
 
*ヨーグルトとフルーツ
りんごなど、ごろんとそのまま籠に盛られているものもあれば、カットした盛り合わせや、シロップ漬け、フルーツポンチなどいろいろ。

ここまでのメニュウは、最低限、必ず用意されているものである。たいてい、ドアを入ってすぐのテーブルにあって、セルフサービス形式でいだだく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

*エッグ
フライド(目玉焼き)、スクランブル、オムレツ、ボイルド(ゆで卵)、ポーチド

*ソーセージ(バンガーズ)
仔牛と豚のミンチに、たくさんのパン粉、ハーブが入ったソセージ。なぜに、この材料でこのようなものを作るのだろう。日本人の感覚でいうと、パン粉が多すぎて、ぶにょ、ぶにょしている。

*ブラックプディング
豚の血が入ってるので、黒くて、太いソーセージという感じ。輪切りになって出てくる。

*ベーコン
基本的に、畜産物の品質が良いので、シンプルな加工でじゅうぶん美味しい。カリカリに焼かれていても、厚めで、肉の味がしっかりしている。

*ベイクドトマト
 
*マッシュルームソテー

*トーストとバター、マーマレード
ブラウンブレッドの薄切りが、カリカリに焼かれ、二等辺三角形にカットされ、お決まりのホルダーに収まってサーブされる。

*パンケーキ

*ポットオブティー
ポットいっぱいの紅茶と、ミルクと、濃さを調整するためのお湯

以上が、基本的な定番メニュウ。B&Bの料金の中に含まれているものである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほかに、特別に注文すれば、

*スモークサーモン

*キッパーズ(ニシンの燻製)

なども、別料金で味わえる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ただし、これらは量的にフルでいただけるものではないので、食べたいものだけを組み合わせて、オーダーをしていく。
 スクランブルエッグと、サーモンと、マッシュルームを少しにパンケーキを2枚ください。とか、マッシュルーム入りオムレツに、プディングと、ベーコンと、ベイクドトマト、トーストは3枚で。というふうに。
 そのため、オーダーには時間がかかるし、ひとつぐらいは間違えるか、抜けちゃうこともあるけれど、短気で短足な日本のおじさんみたいに、空威張りに怒鳴ったりしてはいけません。ここは、そう、ジェントルマンの国なんですから。

この記事を書いた人