MENU

導かれて、パースの宿へ

国の宿泊スタイルは、おおまかに4タイプに分類できると想う。
①HOTELS
グローバルスタンダードなホテル
②BED & BREAKEFASTS
民宿的なものから、ファームハウス、カントリーハウスやマナーハウスなど、カテゴリーは広い。貴族の別荘を改装したものなども含まれる。田舎の大きめな一軒家で、家の中の一室に宿泊するので、ひと部屋ごとに間取りも内装も宿泊料も違う。
③GUEST HOUSES
都市部に多い、長屋的大型メゾネットタイプアパート(4階建てぐらいの、個人のお宅)のひと部屋を間借りする感じ。
④SELF CATERRING
コンドミニアム的なものからキャンプ場まで、自己管理で宿泊するタイプ

 今晩の宿泊先のゲスト・ハウスがあるパースの街まで『A9』にのって約25マイル、1時間の道程である。ふたりのあいだに会話が無いまま、時間は過ぎ去って行った。
 市内に入ったものの、ゲスト・ハウスの場所が解からない。この道路は郊外へ抜けるための幹線道路なので、街道沿いは車の販売店や大型日用雑貨店などが列なって営業していて、もしここに『ユニクロ』や『紳士服のコナカ』があったとしても、まったく違和感が無いだろう街並みである。
 良さんは車をジャガー販売店の店先に止め、地図を片手になかに入って行った。夫婦は困った時の結束が肝心である。そろそろ意地を張るのをやめて、関係の修復に努めるべき潮時であろう。
 となりの車の持ち主夫婦が戻ってきたので、わたしは住所のメモを差し出し、ゲスト・ハウスまでの道順を尋ねてみた。
「あぁ、その住所なら車で10分だけど、説明するとなるとちょっとばかり面倒くさいのよ。ねぇ、あなた、ご案内してさしあげましょ。貴女、わたしたちの車について来るといいわ」と言ってくれたのである。
(バッカスよ。わたしたちを見守り、導いて下さることに感謝します)
 わたしはジャガーのショウ・ウィンドウ越しにジェスチャーで、このグッド・ニュースを良さんに伝えた。車の座席に収まって、わたしたちは手を取り合って喜んだ。物事が良い方向に転換してゆけば、些細な喧嘩などすぐに過去のものとなるのである。

 この御夫婦のナビゲートのお蔭で、わたしたちはどうにかゲスト・ハウスに辿り着くことが出来た。裏庭の車止めでは、オーライ、オーライ。もしてくれた。車止めのスペースが狭いので、良さんが車の切り替えしに苦労していると、隣近所の住人も出てきて、ああするといいとか、こうするといいとか、アドバイスが飛び交い始めた。旅先で助けていただくということは、本当に嬉しい行為であり、その親切に心から感謝である。わたしたち日本人は、来日した人々に、 どれほどの優しさを持って接しているだろうか?
 皆さんの応援で、アットホームにチェックインしたわたしたちは、ウヰスキーボトルのせいですでにずっしりと重くなったトランクを4階まで上げ、やっと部屋に落ち着いた。やれやれ。日はまだ落ちてないけれど、もう夜の8時、さあ、さあ、パブに繰り出そう。

この記事を書いた人