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ニッカ『マイウヰスキーづくり』

 
 マイウヰスキーづくりは、「一般の愛飲家にも、北海道余市蒸留所に於いて、2日間にわたってのモルトウヰスキー製造工程の体験を通し、その真髄にふれて貰いたい。」という趣旨で、「ニッカ」が13年前から続けている活動である。
 参加者が手をかけ、木樽の蓋に名前を寄せ書きしたマイウヰスキーは、余市の自然の中で熟成させた10年後に、瓶詰めして贈呈されるのだという。
 O氏からこの話を聞いた翌日、わたしはさっそく「ニッカ」に問い合わせをした。ウヰスキーづくり体験は、雪解けを待って春から秋まで数回行われるが、希望者が多いために抽選になるのが常だという。しかし、我々にはバッカスがついているのである。もちろんのことながら、すんなりと当選であった。
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2001.4.20(土)
13:45  余市工場集合、受付、着替
14:00~ 工場長挨拶(山地氏)製造工程の講義(製造課長・小原氏) 
     
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[大まかな歴史]

13世紀 
「生命の水」 VISAGE BEATHA(ウイスゲベーハー・ゲール語)誕生
Uisge beatha ~ Usquebaugh ~ Usky ~ Whisky

17世紀
イギリス政府がウヰスキーに重税を課したため、スコッツ(スコットランド人の自称)は
ハイランド地方の山奥に隠れ、密造に走る。
山の清冽な水、小さな銅釜での蒸留。隠して放置された後の、偶然の熟成。
そうして、極上の芳しいウヰスキーが出来上がる。
(こうした密造酒は Mauntain dew 「山の露」と呼ばれた)

19世紀
今から約130年前には、連続式蒸留器が発明され、とうもろこしが主体のグレーン
ウヰスキーが登場し、モルトウヰスキーとのブレンドが始まる。

[世界5大ウヰスキー]

スコッチウヰスキー   (英国)     モルト、グレーン
アイリッシュウヰスキー (アイルランド)
アメリカンウヰスキー  (アメリカ)   バーボン、テネシー、ライコーンほか 
カナディアンウヰスキー (カナダ)
ジャパニーズウヰスキー (日本)      モルト、グレーン

[スッコッチの4大モルト]

ハイランドモルト      スコットランド北部(男性的、余市工場のタイプ)
ローランドモルト      スコットランド南部(女性的、仙台工場のタイプ)
アイレイモルト        アイラ島
キャンベルタウンモルト

[ウヰスキーの格]

「ブレンデットウヰスキー」   
モルトウヰスキーとグレーンウヰスキーのブレンド

「ピュアモルトウヰスキー」
複数の蒸留所のモルトウヰスキーの混合 (スーパーニッカ等)

「シングルモルトウヰスキー」
単一の蒸留所のモルトウヰスキーだけを使用 (余市、仙台等)

「シングルカスクウヰスキー」
単一の樽のモルトウヰスキーだけを使用 (樽番号が入る)

[製造工程] Proces

1.原料 Material      
  厳選された大粒で良質な二条大麦を用いる。
  二条麦は、六条大麦の穂の四列が退化し、実が穂軸にそって二列に並ぶ
  大麦のこと。澱粉が多く、醸造に適している。

2.浸麦 Malting
  浸麦槽において、水に浸して発芽に必要な水分を たっぷり含ませる。
 
3.発芽 Germination
  発芽によって、麦の中に糖化酵素=アミラーゼが生成される。 
  生成のピークの頃合は、麦を指先に取り、壁にすりつけてみて確認する。
  
4.乾燥・製麦
  キルン塔でピートを燃やし、乾燥させる。
ピートは 草炭あるいは、泥炭のこと。川原から掘り起こしてくる。
  1ヶのサイズは20cmx30cmx10cm位。
  乾燥するのに1ヶ月かかるが、10分で燃え尽きる。
  その燻煙が、ウヰスキー独特の香り(スモ-キー・フレーバー)となる。

5.粉砕
  粉塵爆発の危険性もはらんだ、地味でデリケートな作業。
  麦芽ホッパーから、糖化槽(マッシュ・タン)へ。

6.糖化 Mashing
  粉砕した麦芽に温水を加え、
  (1回目、65度の温水を注入する為に、75度の温水を用意。
  2回目、78度の温水を注入する為に、81度の温水を用意。)
  麦芽に含まれる酵素を働らきで、澱粉が糖液に変わる。
  攪拌しながら、麦汁を搾り取る。(水は地下水を汲み上げている。)
  糟は、牛の飼料に廻される。

7.醗酵 Formentation
  糖液に酵母を加え、糖をアルコールに変える。
  (酵母は上限31度で死んでしまうので、温度コントロールしている)
  酵母には特別な名前は付いていない。
  ニッカではN-xxx,と識別してるとのこと。
  (ワインだとモンラッシェ酵母なんて、魅惑的なのがある) 
  醗酵タンクは1本4万L。  
  (蒸留後には、1/10=4000Lの原酒になる)  
  3日程かけて度数7%の、もろみをつくる。
  
8.蒸留 Distillation
  ポットスチルでアルコールを取り出す。
石炭による「直火焚き」。古い樽も、補助燃料として使われる。
  蒸留は2回。度数は1回目で22%、2回目で70%となる。
  ここで出る酒粕は畑の肥料に廻される。
  (ポットスチルは、オール銅製。メンテナンスは道内の業者でまかなえる)
蒸留しはじめと 最終の液は使用せず、香りの良い部分だけを、原酒と
  して樽詰めする。この時点では、まだ 無色透明。(麦焼酎という感じ) 
  
9.熟成 Maturation
  樽詰めして貯蔵。貯蔵に適した度数は65%。 
  樽は北アメリカ産のホワイトオークを使用し、工場内で手造りされている。  
  長期の熟成により、豊かな香味と琥珀色がつく。

10.ブレンド Blending
  モルトウヰスキーと、カフェグレーンを混合し口当たりの良いウヰスキーに
  仕上げる。

11.再貯蔵 Marriage
ふたつの味をなじませる。

12.瓶詰め Bottling

15:30~ モルトウヰスキー製造工程作業体験

[発芽室]
 発芽室に入ることは出来なかった。スコットランドの老舗の蒸留所には、どこにでも、大麦の倉庫と発芽室にやってくる厄介者を退治する、番人役の飼い猫(ザ・ウヰスキーキャット)がいるそうなので、ひょっとしたらここにも、そんな輩がいるのでは?と、尋ねてみたが、特別な飼い猫はいないそうだ。(ちょっと、残念。)

[キルン塔]
 炉ではピートが燃やされ、キルン塔(つまり、建物ごと燻製庫なわけで、天井が「ふるい」のような、細かい目の網で出来ていると想像してほしい。)その網の上に、20cmの厚みで広げられた麦を、煙で燻して乾燥させるのだ。細い梯子を登り、4~5人づつで網の麦の上に立つ。いまのところまだ、網を破って下に落っこちた人はいないが、落下の可能性は否めないとのこと。ピート香に包まれ、ハンモックでも吊るして、お昼寝したいところだ。(しかし、ミイラ化する可能性も否めないよな。)

[粉砕室]
 当たり前のことながら、そこいらじゅう粉っぽい。きめ細かいパウダーがなんだかお肌に良いような気がして、頬にのせてはたいてみた。うーむ。さすがに、シャネルのパウダーとは似て非なるものだ。

[マッシュ・タン]
 マッシュ・タンは、ちょうど、モンゴル遊牧民の白いテントの住居形をしている。まあるくて、屋根がこんもり盛り上がった感じ。ピカピカのステンレス製で、それはまた巨大な宇宙船のようでもあるので、「つなぎ」に「長靴」姿の我々は、『さらば地球よ。旅立つ船は、宇宙船艦ヤマト』的センチメンタルな気分で、麦汁が抜けきったあとのマッシュ・タンの中に入り、『運命を背負って』『イスカンダル』な糟(かす)の排出作業を行った。

[醗酵室]
 顕微鏡で、直径約5ミクロンの酵母が増殖している様子を覗き、(ツユクサの気孔のような面白みは無い。)醗酵を終えた麦汁(もろみ)をティスティングした。こっくりとした甘味のある、まさにビール的なものである。

[ポットスチル]
 石炭をくべる。これは是非とも、人生の中で一度は経験してみたいことのひとつだった。潜熱によってやけどしてしまう恐れがあるので、夏でも長袖を着用するそうである。花形の仕事だけれども、大変な重労働であることも事実だ。

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18:00  着替えて、工場内レストラン「たる」にて夕食、参加者の自己紹介
21:00 二次会の後、工場から徒歩10分の「ホテル サンアート」に宿泊

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