岩手県沿岸の最南端(旧気仙郡)に永い伝統を誇る8軒の造り酒屋がありました。戦時中の「企業整備令」により、この8軒が1つにまとまり「気仙酒造」を設立します。これが「酔仙酒造」の前身です。地元出身の画家・佐藤華岳斎はこの酒をこよなく愛し「酔うて仙境に入るが如し」と讃え、銘柄を「気仙」から「酔仙」へ改めるよう勧めたことが酒名の由来です。 その名の通り、「地元の風土に合った美しい酒」、「芳醇にして呑み飽きしない酒」を目指し、陸前高田の本社工場では操業開始以来、改良と試行錯誤を重ねて自分たちの酒造りを確立してきました。
良い酒を造るにはそのための技術と努力が必要ですが、酔仙がこれまで大切に考えてきたことは、風土と安全醸造です。酒の旨さを追求した結果、どの酒も同じ味になるかと言えばそうではありません。地酒である以上、その土地の風土や食材に馴染んだ個性を持っているべきだと思います。また、旨い酒を造る近道は、毎日安全に仕事を出来る環境を整えることです。毎日途切れること無くコツコツと同じ作業を続ける心の平和が必要だと考えています。心を落ち着かせて、考えうる様々なリスクを減らし、自然に寄り添いながら無理をしない。
この酒造りの精神は今日に至るまで、大切に受け継いできました。そして、東日本大震災による壊滅的な被害を乗り越えてこれからも繋いでいきます。