MENU

SMWS 119.1


ソサエティの2003年オータム・ボトリングス。

大切な友達との約束を果たせた自分への、ちょっとしたご褒美に開けた
6年も前にボトリングされた山崎のシングルカスクモルトウイスキー。

貴重な1番のボトルでも「ウイスキーは飲む為に作られている」ので、
今回も遠慮無く開けて飲ませてもらいます。

SMWSコメント
西日本にある蒸溜所からの初めてのボトリング。
香りは複雑でドライフルーツを連想させる。

◆プルーンとメントール入りのチーク油◆
西日本にある蒸留所からの初めてのボトリングである。
歴史的に有名な美しい都市、京都の郊外に位置している。
奥行きのある深い琥珀色をしているが、輝きのある色である。
深く、重みのある香りで、煮リンゴ、干しイチジク、糖蜜のトフィーが順に現れる。
それから、チーク油とプルーン、それにかすかなメントールが加わる。
口の中でもこれが全て再現される。
滑らかで、大きく、口当たりがさわやかで、袋詰めのドライフルーツのようである。
水を加えると軽いトフィーの香りが現れ、わずかなオレンジピールを感じ、少し酸っぱい。
かすかなメントールの香りは残るが、チーク油は徐々に家具のつやだし剤に変化する。
美味である。
甘く、粘り気があり、まろやかで口をさっぱりさせてくれるが、
少しドライな感じを与え、フィニッシュは長く余韻が残る。

香り
まず、山崎にしてはファッティで高級感ある香りが漂う。
そしていつもの山崎特有の建機や鉛筆のエステルが、
桃のフルーティーな香りとともに立ち上がってきて、
それを追い駆ける様に軽く酸味を帯びたフルーツ(干し葡萄、乾燥無花果)のコクや、
ドングリの油分の様なオークの香りが響き合う。

味わい
滑らかな口当り。
オークの成分がしっかり染み込んだウッディな味わいに、
直火蒸溜原酒の力強さが経年とともに落ち着き、
柔らかいベリーやチェリーのフルーティーな甘さ。
またシェリー樽原酒特有のドライフルーツや、コクのある濃い酸味を感じられる。
そして「もう数年熟成させればトロピカルフルーツがっ!」と思わせる様な、
トロピカルフルーツの予感を彷彿とさせる、「燻り(くすぶり)」を感じる。

加水後の味わい
香りにはトフィーと表現される香りに、ハチミツの軽く酸味を帯びた甘さ、
そしてデーツの濃厚な甘さが引き立つ。
加水しても硫黄が出ず、完熟バナナ、柔らかいリンゴ、ダークチェリー、
ミカンの薄皮、スイカ、カラメル等の様々な甘味と
上品なシェリー樽原酒の味わい(青いラベルのマッカラン30年)。
そこに豆、タンニン、ビタミンといった、香ばしく深い味わいが漂う。

良いのか悪いのか、山崎らしさよりもシェリー樽モルトが持つ美味しさが目立つ。
加水によって「完成されたシングルモルト」になってしまう。美味。

後味
経年に伴ってオークの成分が染み込んだが故に、フルーティーな味わいの後は、
リンゴの種に近い果肉の甘味や、硬くなった部分のタンニンの渋味が訪れる。
しっとりとした、ほろ苦くも甘い余韻が快く続く。

総評
香りも味わいも、それぞれがコクのあるドライフルーツの、
心地良い酸味がかったものなのに、
飲みつつ香るとクレームブリュレの様なトロトロに深いバニラの甘味を感じる事となる。

もう数年〜10年は熟成させてオフィシャルの山崎25年の構成原酒とする予定だった物を
22年でボトリングしたかの様な感覚になる。
それでも、これこそ「THE YAMAZAKI」という感じのシェリー樽原酒。
同じ蒸溜所のシェリー樽原酒でも、オフィシャルの18年や、
それを感じる119.9とは明らかに方向性が異なっている。

長熟モルト用に仕込まれた事を分かりやすく感じ取れる、
面白く、そして美味しいモルト。

#山崎

この記事を書いた人