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シングルカスク駒ヶ岳1989 #617


この春に発売されたばかりの本坊酒造マルスウイスキーの新商品。

1989年4月〜2009年4月(20年)、
46%、American White Oak、555本。

ファーストシリーズで2樽ボトリングされたシングルカスク駒ヶ岳の内、
1本は樽番号616でしたので、近い味わいかと思ったのですが、
蒸溜月が異なっていました。

ちなみに、Kumamoto Bartenders Chiceの試飲サンプルとして出されていた
「162、313、566、617、1039」の5本の内の1つみたいです。

オフィシャルコメント
バニラの様に甘くフルーティな香りと、エステルの華やかな香り、
そして樽のシャープな樹脂の香りが感じられます。
長期熟成により、ホワイトオークの成分が十分に溶け込み、
芳醇でウッディー感溢れる逸品です。

香り
アザミの花の様な酸味あるフローラルで、ねっとりとした甘味。
しっかりとしたピートに炒り大豆の香ばしい香り。
はちみつ掛けのエキゾチックな漢方薬。

活き活きとしてパワフルなエステルでありながら、桃、桃の仁や青リンゴ様の
タンニンを含んだ甘味にチョコレートがコーティングされている様は、
熟成が進んで長熟期に移りつつあるモルトだという事をストレートに感じる。

味わい
青リンゴではあるもののエステルの嫌味、
タンニンの渋味と、大豆の軽いエグ味を感じた後、
甘味や酸味を感じた香りとは正反対にビターで辛く、暖かい。

加水後の味わい
かすみ草のフローラルも引き立つが、エステルがさらに香り立つ。
味わいは苦みや渋味が増すだけなので、お勧めしない。

後味
味わいとも香りとも違った、熟してエステリーなモルト原酒らしい
「枯れた」甘味と爽やかで水々しい青リンゴ系フルーツの、
美しく優しいドライなコクと控えめな甘味が長く続く。

総評
直火蒸溜の濃厚な味わいの原酒が20年の時を経てしっかり熟成した様が良く分かる香り。
しかし加水の影響があるのかどうかは分からないが、味わいに厚みが無く、
明らかにハーフショットでは分からない。
少し飲み続けて見えてくるフィニッシュの美しさで、
このモルトの良さをやっと分かる事ができる。

そして何より、パワフルで力強い傾向のマルスウイスキーのモルト原酒が
こんなに枯れ気味になる時が、もう来ているとは思いもしなかった。
これはこれでショックを受けた。
それはまるで、まだ元気に見える親が治らない大病で余命宣告された時の様な感覚。
きちんと飲んであげる事がマルスウイスキーへの、せめてもの報いだろうか?

まだ心の中で、枯れ気味みの味わいをどうやって受け止めたらいいのか分からない。
マルスウイスキーの残り少ない樽の幾つかは、
この原酒と同じ様に枯れてきているのではないかという不安を感じた。

マルスウイスキーに永遠は無いのだろうか…。

#マルス(本坊酒造)

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