2012.6.10
スターリングに一泊して、この日は日曜日。もうご存知の通り、スコットランドでは土日になると公共交通機関の本数は激減。蒸留所のツアーなんかも休みのところが少なくなく、観光ツアーやってるのに日曜休みってどういうことや!?という感じなのです。
そんな中、日曜でも見学を受け付けているような蒸留所は、少なからず観光に力を入れているところと言えるのではないかと思うのですが、この日の目的地であるグレンタレット蒸留所は、まさしく観光に力を入れまくってる蒸留所でした。
スターリングからバスに揺られること50分ほど。クリエフという中規模程度の町に到着すると、そこからさらに歩くこと20分ほど。バービック川に沿って歩くと、町外れの森の中に目的の施設はあります。
(フェイマス・グラウス・エクスペリエンス)
こちらのグレンタレット蒸留所は、雷鳥のアイコンで有名なブレンデッド・スコッチ、フェイマスグラウスのホーム蒸留所となっています。アバフェルディのデュワーズ然り、ブレアアソールのベル然り、ブレンデッドのキーモルトとなるホーム蒸留所では、シングルモルトの名前よりもブレンデッド銘柄の方を大きく打ち出していることも多い。シングルモルトの人気が上がってきたとはいえ、本国では、やはりブレンデッドの方が知名度は高いし売り上げも桁外れ。マイナーな蒸留所名を打ち出すよりか、こうしたブレンデッド銘柄の名前を前面に押し出した方が、観光資源としての価値は上がるのだろう。
(相当キテるデザインの雷鳥のオブジェがお出迎え。看板には「BEST LOVED IN SCOTLAND FOR 30 YEARS」のコピーが)
至る所に雷鳥のアイコンが躍っておりましたが、この蒸留所には、もう一つ忘れてはいけないキャラクターがおります。それがこちら!
(そう!タウザー君です!)
まだまだ蒸留所の衛生管理などが不十分だった頃。蒸留所では、原料となる大麦を大量に貯蔵するため、それをエサにするネズミにとっては恰好の住処でした。困った蒸留所の方たちは、ネズミ対策として猫を飼うことによって、彼らに害虫駆除の役割をまかせておりました。彼らはウイスキーキャットと呼ばれ、設備が整ってネズミによる被害も収まった現在に於いても、ボウモアやハイランドパークなど一部の蒸留所では愛され続けており、時折気侭な姿を見せては、ツアー客の目を楽しませている。そんなウイスキーキャットの存在を、世界に広めたといっても過言ではないのが、ここグレンタレットのウイスキーキャット、タウザー君なのです。
彼女(先ほどから「タウザー君」と呼んでますが、タウザーは雌猫です)は、ある偉業によって、ギネスブックも認定している、まさしく「世界一のウイスキーキャット」。その記録とは、23年11ヶ月の生涯において、なんと28,899匹ものネズミを捕まえたというもの。まさしくネズミ捕りのプロフェッショナル。ウイスキーキャットの本領発揮といったところでしょうか。その偉業によって、タウザー君が亡くなった時には、その死亡記事が新聞に載ったほどだったといいます。一体全体、そんなに多くのネズミの数をどうやってカウントしたのだろうか。。一説によると、タウザー君は仕留めた獲物を、毎回ご主人のもとへ見せにきたとも言われていますが。。しかし、たいしたもんです。
タウザー君に会いにきたら、それよりも雷鳥だらけで少し面食らってしまいましたが、無事、タウザー君との面会も済ませたところで、ツアーの受付をします。
(金文字で「SCOTLAND'S OLDEST DISTILLERY」と描かれているのが分かる。ここ、グレンタレット蒸留所の創業は1775年と、とても古く、スコットランドでは最古といわれている)
流石に観光に力を入れているだけあって、ツアー内容も完全にアトラクション。そのくせ、製造棟内部での写真撮影はNGでとても残念だった。
(道を挟んだ向かいに並んでいるウェアハウス。きれいなビジターセンターとは違い、流石スコットランド最古といえるような年季の入りようである)
(内部は写真NGなので外から。コンデンサーが突き出していることからも分かる通り、黒い大きな窓が目立つ建物がスチルハウス)
(中では撮っちゃダメと言われたので、外から張り付いて撮ったスチル。うーん。。なんのこっちゃ)
施設としてはとても近代的な感じでしたが、蒸留設備はとてもレトロ。ウォッシュバックも木製のものを使用していたし、スチルハウスも木造で、三角屋根の梁の間をラインアームが通っていく様子などは、ストラスアイラ蒸留所のスチルハウスなんかを思い起こさせた。
(見学ツアー向けのウェアハウス。「QUIET PLEASE WHISKY SLEEPING」の文字も)
(アトラクションツアーの中でも特に印象に残ったのがこれ。雷鳥が我々にスコットランドを案内してくれるというもの。前面のモニターだけではなく、壁面や床にも映像が映し出され、まさしく空を飛んでいるような感覚だった)
ツアーは試飲も充実しており、通常のフェイマスグラウスの他に、アイラモルトを掛け合わせたスモーキーな「ブラックグラウス」や、キンキンに冷やして飲むスタイルが提案されているブレンデッドグレーンの「スノーグラウス」の3種に、控えめながらグレンタレットのシングルモルトも試飲することが出来た。
ツアーを終えると、これまた充実しまくっているショップでのお買い物。ここでも雷鳥が乱れ舞っておりました。
(ショップにあったもので一番高かったのがこのボトル。そう。ハイランドパークの50年ものなの。確かに、同じエドリントン・グループではあるけれど。。)
(フェイマスのジンジャーハイボール缶なんかも発売されていた)
最近では、非常に評判のいいモルトを生み出し、ビッグビンテージなんかも注目される蒸留所ではありますが、やはりまだまだ比率はブレンデッドのほうが大きいのでしょう。エンタメ性にも溢れた、楽しめる蒸留所でした。
#Glenturret