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111. ガーヴァン、レディバーンそしてアイルサベイ( Girvan, Ladyburn, and Ailsa Bay)

2012.06.12

 さて。この日は、グレンタレット、タリバーディン、ディーンストンと三つの蒸留所を訪れるのに基点としたスターリングの街を離れ、一路南下。ローランド地方を目指します。

 まずはバスで30分ほどかけてグラスゴーまで戻ります。グラスゴーから目指すガーヴァンまでは電車が走っているので、乗り換え。その乗り換えの時間がやはり30分ほどあったので、その隙にグラスゴー市内にあり、かつてはキンクレイスというモルトを製造していたことでも有名なストラスクライド・グレーン蒸留所でも覗き見しようかなーとふらついたのだが、この日は雨。30分で行って帰ってくるのは少しく時間的に不安があり、結局途中まで行って踵を返し、駅周辺のパン屋さんで朝ご飯を買ったら予定していた電車に乗り込みます。

 電車に揺られること1時間20分ほど。長い時間をかけて、ガーヴァンの街に到着です。

 雨は相変わらず降り続いており、少しく億劫な気持ちになりながらも駅から幹線道路沿いに30分ほど歩くと、青々とした緑の大地の中に工場的な建物が見えてきます。


(やはり、グレーンウイスキー蒸留所は、モルト蒸留所に比べてデカさがハンパない)

(「ウェルカム」と看板にはあるが、当然ノービジター。その下には、ロゴ付きで「Home of 『Grant's』『HENDRICK'S GIN』」の記載も)

(写真のような樽も敷地内にはおいてある。何だろ?と思い、開けてみたらゴミ箱だった)

(蒸留所正面から)

 私が呑気に写真を撮りながら進んでいく間にも、巨大なトラクターが何台も往来しており、慌ただしい雰囲気。部外者以外お断りの雰囲気をびしばし浴びながらも、とりあえず写真にも写っている関所のような受付に声をかけます。

 「はろー?」「ハイ」
 「見学したいんだけど」「(面倒くさそうな表情で)ウチは見学やってないよ」
 「いえーす。分かってるよ。でも、外から見るだけだから」「(怪訝そうな表情で)無理だって。アポとかあるの?」
 「のー。でも見るだけ!ジャストルッキン!プリーズ!」「(あきれたような表情で)オーケー。ちょっと待ってな。(奥のテーブルがさごそ)蒸留所を見学したいならここへ行きな。ただで見学できるよ(グレンフィディックのパンフを渡しながら)」
 「もうそこへは行ったよ。非常に素晴らしい蒸留所だったね。でも、私が見たいのはこの蒸留所なんだよ」「(困ったような表情で)ここは見学やってないの。ごめんよ」

 と、拙い英語で無茶苦茶な要求をする私に対しても、丁寧に対応してくれる職員さん。その間も電話が鳴ったりして、その電話を鳴らしっぱなしにしながら私の対応をしてくれた。ホントに申し訳ないことである。流石にこれ以上の強引な交渉は私も断念。最終的には「じゃあここからなら写真撮っていい?」という私に、職員さんも諦めたように首肯してくれた。
 
(正面から。奥に、ちょうど原料となるモルト・グレーンを運んできたと思しきトラックが、荷下ろしをしている)

(左手には熟成庫だろうか、同じような形の建物がずらりと並んでいた)

 かつてはレディバーンというモルト蒸留所を併設していたこの蒸留所。レディバーン自体は1975年に取り壊されてしまったが、今度は2007年にアイルサベイという新しいモルト蒸留所を建設しており、蒸留も行っているとのこと。みれたらアイルサベイだけでもみたいなー、と思っていたので、職員さんに「アイルサベイってどの建物?」と訊ねたら「あっちだよ。あの奥の」と、わりとぞんざいな感じで教えてくれた。

(「あの奥の建物」)

 しばらく入り口付近で粘って、その間も中へと入っていくおっちゃんたちに愛想を振りまきながら、なんとか見学への糸口とならぬかと勘案したのだが、およそ無理。素直に諦めて、職員さんにお礼を言って蒸留所を後にします。

(さよならガーヴァン!)

 思えば、これが私にとって最後のノービジター蒸留所。後でそれに気付いて、せっかくならもっと粘れば、とも思ったが、どの道グレーン蒸留所は見学させては貰えないだろう、という感が強かったので、諦めて正解だったでしょう。

 さて。街に戻って、この日はさらに南下してウィグタウンという町まで行く予定。ガーヴァンのバス停でタイムテーブルを確認していると、雨に打たれて身体が冷えたのか、尿意をもよおし近くの公衆トイレへ駆け込む。
 ふーっと一息つきながら、身体を弛緩させきっていると、たまたま隣で同じくくつろいでいたおっちゃんに話しかけられる。
 「なにしてんだ?」「バスを待ってるんだよ」「ニュートンスチュアートまでならまだまだだろう?コーヒーでも飲むか?」「そう?ならコーヒーより」「茶にするか?」「ビールがいいな」「がはは。よし、ホテルへ行こう」と、なぜか公衆トイレで隣り合っただけという関係のおっちゃんとホテルのパブへ。袖振り合うもなんとやらである。

 おっちゃんに連れられてきたパブでも、おっちゃんはコーラ。どうやらお酒は全く飲めないらしく、ビール飲みたいなんて言って悪いことしたかな、と思いつつも私はビールを一杯頼み、色々なことを話す。ホントにお喋り好きのおっちゃんという感じで、私の旅のことを中心に、日本のことやスコットランドのことなどたくさんお話をした。最後にはメールアドレスを交換するまでに至ったのだから、出会いというのは妙なものである。

 そろそろ時間ということでパブを後にし、先ほどのバス停まで。おっちゃんはバス停まで見送ってくれ、バスがくるまで一緒に待ってくれ、さらにはバスの運転手さんに時間の確認までしてくれて、最後はハグして手を振って別れる。人懐っこくお喋り好きで、世話好き。私の出会ったスコットランドの方々はこんな人がとても多く、ホントにお世話になりっぱなしだった。
 

 ガーヴァンからは一旦バスで50分ほどかけてニュートンスチュアートまで。ここでも雨が強く降っており、屋根付きとはいえバス停で乗り換えを待っているのが辛かったので、近くにあったケバブスタンドへ行き、軽くご飯を食べてからパブで一杯。そこからバスで10分ほど行くと、今夜の終着点であるウィグタウンに到着です。

#Girvan(Ladyburn, and Ailsa Bay)

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