2012.06.09
グラスゴーで迎える朝も今日が最終日。アイラ島に続いてグラスゴーのホステルでも同室だったザックも、今日が出立の日ということで、共に朝食を済ませるとチェックアウトをします。
この日は、グラスゴーを出発してスターリングまで行く予定。エジンバラからスタートしたこの旅も、一周してついにここまできたか、と感慨深くなる思いでバスターミナルまで行き、ザックとはそこで別れる。
彼は最後まで私の面倒をよくみてくれ、私の拙い英語での話を面倒くさがらずにしっかり聞いてくれた。バスターミナルもグラスゴーはでかい。そんな中、私の乗るバスのナンバーを一緒に確認してくれたりして、ホントに最後までお世話をかけっぱなしだった。
「また会おうね」と言い合って別れ、翌年に私が台湾に行った時に再会。多いに歓待してくれて、カバランの蒸留所などを案内してくれた。次は、彼が日本に来た時に、私が蒸留所を案内する番である。
グラスゴーからスターリングまではバスで40分ほど。さらにそこから、本日の目的地であるディーンストン蒸留所のあるドゥーンという町までは25分ほどかかります。
バスを乗り継いで、都市の喧噪が遠のいた幾つかの森を抜けたところで、目的の蒸留所に到着です。
(レンガ造りの建物はパゴダ屋根も無く、一見して蒸留所には見えない)
(建物のすぐ脇をティス川が流れている。豊富な水源はディーンストン蒸留所に大きな恵みを与えている)
創業は1965年と比較的新しい蒸留所。ビジターセンターにはショップやカフェも併設されており、とてもこぎれいな印象です。近年では、ケン・ローチ監督による映画『天使の分け前』の舞台となった蒸留所の一つで、私が行った時にはちょうどこの映画の公開前の時期。ビジターセンターにもポスターが貼られていて、当時の私はこれをてっきりローカルな映画だとばかり思い込んで「こんなウイスキー映画もやるんだなぁ」と、ディーンストン蒸留所のプロモーションくらいにしか考えていなかった。
それはさておき、ツアー開始。私の他にはニュージーランドから来たというおっちゃん二人組が参加しており、挨拶をしたらフレンドリーにあれやこれや話しかけてくれた。ガイドはやたらと色っぺーねーちゃんで、なんだかむんむんというような感じ。都合4人のツアーは、まずは蒸留所の歴史などを勉強するお決まりのVTRからスタートです。
こちらの蒸留所は、もともと紡績工場だった建物を改築して利用されたもの。幾つかその名残を確認することが出来るのだが、その中でも注目すべき設備が、水力による発電施設です。
(パネルでは、当時ヨーロッパ一、世界でも二番目に大きかった、巨大な水車についての説明がある。見えづらいが、パネルの写真には人物も写っており、水車の大きさと比較するとどれだけ巨大か分かる)
工場のすぐ脇を流れるティス川を利用した水力発電で、当時は300馬力もの出力を生み出していたそう。現在では水車は取り除かれ、代わりにタービンが設置されている。これにより蒸留所で使用する電力は全てまかなわれ、それだけでなく、生み出される電力の75%ほどは電力会社に売っているというから驚きである。
蒸留所によっては、冷却用に使用した廃水を再利用して温室を温めたりしているところもあるが、流石に自分のところで電気つくって、その上、電気会社に供給している蒸留所なんていうのはここくらいなものだろう。
意外な設備に感心しながらツアーは進みます。
(見慣れた姿のモルトミル)
(オープンエアのマッシュタンも見所の一つです。でかい!)
(ウォッシュバックはステンレス製のものが8槽)
(元気に発酵中です)
(そしてスチルハウスへ。差し込む光によって、やたら神々しい輝きを放つスチルが計4基)
(ぴっかぴかのスピリットセーフには勢いよく蒸留液が流れ出していた)
(美しいスチルハウス。奥の2基が初留、手前の2基が再留です)
(最後はウェアハウスへ。アーチ上の低い天井が紡績工場時代の名残で、これも珍しい。うす暗い。)
ツアーの最後は試飲。陽気なおっちゃんと色っぺーおねーちゃんとのツアーで楽しかったのだが、残念ながら私にはバスの時間が迫っている。今後の計画を考えると、今日中にもう一つの蒸留所を回っておかないと厳しいところがあり、そのためには次にくるバスに乗らないと間に合わないのである。
本来ならゆっくりと試飲を楽しみながら、おっちゃんたちともコミュニケーション取りたいところなのだが、時計をちらちら見ながらの試飲。そのくせ、陽気なおっちゃんたちは、一人で蒸留所を巡っているという私に興味津々で色々話しかけてくれ、中座するタイミングを与えてくれない。うむむ。困ったものだ。思いながらも、おっちゃんたちは少しいいツアーに参加していたらしく、私にはない2杯目のグラスを受け取っている。ここを先途と見るや「ソーリー、バスのタイムがカミング」みたいなことを言って、席を立つ。「気をつけてな!」と送り出してくれたおっちゃんやガイドさんに、何か無粋をしたような気分になりながらも、時計はすでにバスの時刻を指し示している。ここからバス停までは歩いて5分は歩くので、もしバスが定刻通りに到着していたら間に合わない。まぁ多少は遅れているだろう、というスコットランドでのお決まりを勘案してのことだが、果たしてバスは時刻通りに到着していた様子で、ビジターセンターから駆け出す私のまさにそのタイミングで、向こうから目的のバスがやってくる。こいつを逃すわけにはいかない。バス停でないのは承知の上で、大きく手を振り、運転手さんに気付いてもらうと、運転手さんもなんてことは無い様子で停まってくれて、なんとか乗車に成功。最後は慌ただしくなってしまったが、それがもったいなくなるような、いい蒸留所でした。
#Deanston