2012.06.05
スプリングバンク、そしてグレンガイル蒸留所の見学を終えた時刻は、ちょうどお昼前。そのままキャンベルタウンに残るあと一つの蒸留所、グレンスコシアに向かうことも出来たのだが、こちらの蒸留所はスプリングバンクなどと違ってノービジター。そして、これまで数々のノービジター蒸留所を巡ってきた経験から、お昼の時間帯にいくと、見学できる可能性がとても低い（下手したらスタッフの方が出払ってしまっていて誰もいない）ことを学んでいたので、スコシアに赴くのは14時過ぎにしよう、とその時間までしばらくキャンベルタウンの町をふらついて時間を潰します。
スプリングバンクで見せてもらった、古い蒸留所マップを参考にしながらキャンベルタウンの町をふらつき、テスコで買ったサンドイッチで簡単に食事を終え、海を眺めたり、インフォメーションによったりして時間を潰し、もうそろそろいいだろう、と蒸留所に向かいます。
グレンスコシア蒸留所は、町の中心部から北側、ちょうどキルダロイグ湾を見下ろすような丘の上に建っております。
（どーん。白壁にしっかりと蒸留所名が書かれた立派な看板。因みに、いま場所を確認するためにグーグルストリートビュー先生で確認してみたら、壁は薄汚れて看板の文字も消えかかっているような外観が映し出された。おそらくはグーグルカーが撮影を終えた後に壁も看板も新しく設えたのだろう）
蒸留所への入り口は別に大きく口を開けていたのだが、看板のすぐ下に「RECEPTION & WHISKY SALES」と書かれた小さなドアが。一瞬、受付を無視して現場で直談判しようかという考えが頭をかすめるも、久しぶりのノービジター蒸留所ということもあって、とりあえず受付にだけは顔を出しておこう、ついでに「WHISKY SALES」の文字も気になるし、とドアをくぐります。
「ハロー？」と入り口付近で大声を上げながらも中にずかずか侵入していくと、奥にあった部屋で男性が一人デスクに腰掛けて何かを作業している最中。「ハーイ」なんて適当な挨拶をしてから交渉を開始します。結果「中に入っちゃ駄目だけど、外から見るだけならいいよ」との了解を得られたので「サンキュー」と笑顔で手を振ってから、今度は蒸留所の門をくぐって我が物顔で所内へ。
やはりノービジター蒸留所で受付に声をかけたら、そりゃあ駄目だって言われるよなー、と思いながら所内をふらついていると、ちょうど中から一人のおっちゃんが！これはチャンスとばかりにすり寄っていき「見ていい？」と。しかしおっちゃんは怪訝な表情を隠そうともせず、不審者を見るような感じで「オフィスに行け」と一蹴されてしまう。なにくそ、こちとら言語以外のコミュニケーションはだいぶ鍛えられてきているんだ、と「オフィスならもう行ってきたよ」と言うと、おっちゃんも呆れたのか「その辺勝手に触ったりするなよ」と私のことを放っておいてくれたので、そのまま建物の中へ入っていきます。
（入り口すぐ正面には2基のスチルの姿が！）
おそるおそる建物の中にまで侵入を果たしたまでいいが、どこまで入って行っていいものやら、としばらくは入り口付近をふらふらします。しかし、先ほどのおっちゃんも私を無視して作業をしているので、ここは無神経に入っていってみようかしら、と大胆に奥の部屋まで入っていきます。
（正面向かって左手が再留釜）
（右手側が初留釜）
（スピリットセーフ。やはり蓋が開いている…）
さらにスチルハウスを通過して右手の方にある部屋にも足を伸ばしてみます。
（赤く輝くマッシュタンと）
（ステンレス製のウォッシュバックが6槽。手元にある『モルトウイスキー大全』には、この蒸留所のウォッシュバックは「コールテン鋼」という特殊な金属で作られている、と書かれているが、写真の通り、もうステンレスに替わっているようだった。マッシュタンはその「コールテン鋼」とやらのよう）
しばらく自由に見学させてもらい、満足してスチルハウスへ戻ります。すると、先ほどのおっちゃんがスチルの前でなにやら作業をしていたので、すすすーっと近寄っていき、まずはお礼。サンキュー、楽しかったよ、みたいなことを言っておっちゃんと肩を並べてスチルを眺める。それから「ラブリーなスチルだね」みたいな世間話をしているうちに、おっちゃんも私に対する警戒心が薄れたのだろう、いろいろ話をしてくれてとても楽しかった。
（世間話をしていたら、スチルハウスの壁の向こうにあるコンデンサーも見せてくれた。間の青い箱からは煙がもくもく。なんだこの箱…？）
（私が興奮してぱしゃぱしゃ写真を撮っているのを、生暖かく見守ってくれたジム）
（スチルから伸びたアームは壁を突き破って先ほどのコンデンサーへと繋がっていく）
中に戻ってからもジムは仕事を続けており、私もそれにくっついて、あれやこれやを拙い英語で尋ねたりする。ジムも、迷惑半分、面白半分でいろいろ教えてくれた。そんな私の様子を見て、やってきたもう一人の若いスタッフが「Do you wanna work?」と笑いながらちゃかしてくる。私も笑顔で「イエース！」と答えると、ジムも苦笑いをしながら実際の手順に従って操作方法などを教えてくれた。
（稼働中の初留釜の蓋を開けて、中を見せてくれたりした。沸々ともろみが沸いている）
押し掛けて来たにもかかわらず、なんだかんだで面倒を見てくれるジムの優しさに甘える形で見学は終了。強引に行く私も私だが、そんな部外者にも結局は色々と教えてくれたジムには感謝しきりです。
（最後にスチルとのショットをパシャリ。「撮るよ〜！」と声をかけたら照れながらもポーズをとってくれた。ホントにありがとうジム！）
見学も満足したのでそろそろお暇しようかとジムに改めて挨拶。「今日はもうプランが何もないから飲みに行くつもりなんだ！」と伝えると「それならアードシールホテルに行くといい。ボトルがたくさん並んでるぞ」とオススメのパブを教えてくれた。懇切丁寧な道案内までしてくれて、ホントに感謝。「サンキュー」と軽い言葉を残してグレンスコシア蒸留所をあとにします。いやー。楽しかった！
#Glen Scotia