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107.ロッホローモンド / Loch Lomond

2012.06.08

 リトルミル、インヴァーリーヴンと蒸留所跡地(?)をさまよった後は、こんどこそという思いで現役蒸留所を目指します。

 インヴァーリーヴンのあるダンバートン・セントラル駅から北上し2駅。鉄道駅でいうとアレクサンドリア駅とバロッホ駅とのちょうど間あたりに、今度の目的地、ロッホ・ローモンド蒸留所はあります。
 今回ばかりは歩いて行くにはちょっと距離がある。かといって電車に乗るのはお金がもったいない、というわけで、電車よりも運賃の低いバスを探してダンバートンの町をふらつきます。
 この時、拾うべきバスはあまり本数がなく、バス停にきたバスに乗り込んでは「Does this bus go to baroch?」みたいなやり取りを繰り返し「204か205のバスを待ちな」と言われてしまう。ようやくやってきたバスの運転手さんもあまり愛想がよくなく、その上運賃も思っていたより高い。確か片道で3.15£はした。少しく憮然とした態度になりながらもなんとかバロッホに到着します。

 バロッホは、スコットランド一の湖面面積を誇る巨大なローモンド湖のお膝元にある町。レストランや水族館、また湖上に浮かぶインチマリン島に向かうためのフェリー乗り場などもあり、観光するにも良さそうな町です。
 しかし、私の目的は蒸留所。広大な湖の姿は横目でちらっと眺めるだけに済ませ、ロッホローモンド蒸留所を目指して湖とは逆方向に歩き始めます。

 歩くこと15分ほど。街路樹の緑がきれいな通りを抜けると見えてくるのが、巨大な複合蒸留所、ロッホローモンドです。

(外観は多くのモルト蒸留所とは似ても似つかない)

 かつてはキャラコという棉布の染色工場であったというこちらの蒸留所。リトルミル蒸留所の第2工場として改築されましたが、それからオーナーは移り変わり、現在は2014年の3月に迎えた新オーナーの元、独立資本系の蒸留所として稼働しています。
 そして、こちらの蒸留所で特筆すべきことが、なんといってもそのブランド名の多さ。蒸留所名をそのまま冠したロッホローモンド(モルト)の他に、インチマリン(特殊スチル使用モルト)、クレイグロッジ(ヘビーピートモルト)、オールドロスデュー、グレンダグラス、クロフテンギア、インチファッドそしてインチモーンと、限定のシングルカスクリリースも含め、実に8種類ものブランド名を使用しているのだ。多くの蒸留所が、そのまま蒸留所名をブランド名にする中、これだけ多様なブランド名を使われると、こちらとしては「ん?クロフテンギア?そんな蒸留所あったっけな??」と少しく混乱を誘う蒸留所なのである。
 そんな数多くの製品を生み出せる秘密は2つあります。1つは蒸留所内にグレーンウイスキー用の連続式蒸留機を備えているということ。これによって、単一蒸留所のみで製造された、世にも不思議な「シングルブレンデッドモルト」を生み出すことも可能なのだ。
 そしてもう一つが、モルト用のスチルの形状。通常のスワンネックを備えたポットスチルの他に、ローモンドスチルを改良して作られたという、奇妙な寸胴型のスチルを設えているのだ。ローモンドスチル自体、かつてはグレンバーギやミルトンダフで試験的に導入され、それぞれグレンクレイグ、モストウィーというモルトを製造していましたが、どちらの蒸留所もいまでは取り払われて、ローモンドスチル蒸留のモルトはいまや幻となっています。唯一、スキャパ蒸留所のスチルの型は、ローモンドスチルと同じ寸胴型ですが、こちらもローモンドスチルの特徴である内部の仕切り板は外されてしまっています。
 そこにきて、ロッホローモンドのスチルはというと、ボディは寸胴、ネックにはアルコール度数やタイプの違うモルト原酒を製造するため仕切り版が取り付けられており、まさにここだけのオリジナルスチルといえるのだ。

 さて。長々と蒸留所の説明をしてしまったのだが、いざ、いつものように敷地内に突撃してみようとするも、どうもそんな気になれない。
 というのも、前述の通り、ここはグレーンウイスキー製造も行う巨大な複合蒸留所。複合蒸留所はモルト蒸留所と比べ規模が大きく、工場のような雰囲気が強い。その上、業者さんはひっきりなしに大きなトラックで出入りしているし、そもそも、もちろんノービジター蒸留所だ。正面突破は難しそうに感じたので、とりあえず敷地の外をぐるぐる回ってみることにします。

(ぐるぐる……)

(ぐるぐる……)

(ぐーるぐーる……)

 隙があればどっかから侵入してやろう、くらいの泥棒感情でまわりをふらつきますが、大きな工場はそんな隙なんて見せやしません。うむむ。
 蒸留所の隣の敷地には、クーパレッジやウェアハウスが並ぶ一画もあって、そちらもちらちら見てみてはいたのですが、やはり入りづらい。作業中のおっちゃんたちに愛想を振りまいてみても、みなさん忙しそうにしているだけで、知らん東洋人は目もくれませんでした。うむむむー。
 
 というわけで、残念ながらも蒸留所見学は断念。特徴的な蒸留所であることは前述の通りなので、スチルハウスだけでも見たかったんだけどなー。

#Loch Lomond

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