MENU

トミントール蒸留所へ

2012.05.09

 ブレイヴァル蒸留所のマネージャーに、トミントールの町まで送ってもらい別れる。この町には「Whisky Castle」という、有名なウイスキーショップがあります。


(お店の看板。「OVER 500 Malt Whiskies」と書かれた看板も)

 こちらのお店は、どうやら観光名所のようにもなっているらしく、私が到着した頃も、ちょうど、観光バスと思しき車両から降りてきた団体さんが、わらわらとお店の中へ入っていき、あれやこれやいいながら、色々買っていっておりました。私も、そんな中に混じって少しだけ見学をして、早々に蒸留所を目指します。

 というのも、次のトミントール蒸留所は、このトミントールの町から6マイルも離れている。普通に歩けば2時間はかかる行程で、さすがにもうあまり時間もない。ポストオフィスで飲み物を買って、一応観光インフォメーションにも顔を出して地図をもらう。ちょうど、もらった地図に、トレッキングルートのようなものが描かれていたので、これはいい、とその地図を見ながら蒸留所を目指します。

 車内で話を聞いた所によると、このトミントールという村は、スコットランドで一番標高の高い場所にある町なんだそうだ。(手元の『モルトウイスキー大全』には「ハイランドでもっとも標高が高い村」とあるから、こっちが正解かもしれない)。トレッキングというだけあって、かなりの山道をぐんぐん登っていきます。


(道中、振り返って見遣ったトミントールの町。流れる大河はエイボン川です)

 しかし、このインフォメーションでもらった地図を参考にしていたのが悪かった。どこでどうルートを間違えたのかは知らないが、気付いたら道をどんどん登っていっており、車道なんかははるか眼下に見下ろせてしまうほどの高さに。これはさすがにまずいのではないか。このまま行ったら遭難するぞ。と、わりとシャレにならないような雰囲気に。
 ずっと一本道だったはずなのになー、やはり、唯一の曲がり角を間違えたのかなー、と、そう思うのならいま来た道を引き返せばいいのだが、話はそう簡単でもなく、というのも時間がない。ただでさえ、トミントールは基本的にはビジターの受け入れは行っていない。事前予約をすれば見学も出来るらしいのだが、飛び込みで行ってもおそらくは無理だろう。もうすでに夕方の時間帯に入っているし、これ以上遅れたら見学どころではない。そして、宿にも帰れないかもしれない。
 歩みを進める度に、引き返せないという気持ちはどんどん強くなっていき、それが結果的に到着を遅らせているのじゃないだろうか、なんて急がば回れ的な考えが頭をぐるぐるし始めます。
 とにかく車道にでよう、と決めたのはその頃。幸い眼下に車道は直接視認することが出来る。曲がりくねった車道で、この先もう少し進めば、私がいる斜面の方へカーブしているので、その辺り、つまり、車道と私のいる山の斜面との直線距離が一番短くなる辺りで、思い切って山を下ろう、と、途轍もないアドベンチャーな発想をする。

 しばらく歩き、さてこの辺りだろうか、と目算をつけ一気に下る。かなりの急斜面で、殆ど崖のよう。重心を後ろにして、殆ど寝転ぶように下っていく。これが、ホントに山道で、私がずるずる下っていくその姿にびっくりしてうさぎや、シカまでもぴょんぴょん跳んで逃げていったのには笑った。
 なんとか下まで降りることに成功し、車道に出る。いやぁ大変だった。


(写真だと伝わりにくいが、転がるように下った山の斜面。てっぺんがみえない)

 さて、アドベンチャーを乗り越えて満足してもいられない。ここから蒸留所までもまだまだ遠いのである。
 悠長なことは言っていられないので、とにかく蒸留所のある方角へ歩みを進めつつ、後ろから車が近づいてきたら振り返って親指を立てる作戦に。
 すると、幸い一台目の車が止まってくれる。インフォメーションでもらった地図を広げ「蒸留所に行きたいの」と言うと乗っけてくれた。

 アンジェリカという女性で、後ろには2匹、大きな犬が乗っていた。「こんなところでびっくりしたわ」と笑われたけど、警戒はされていないようだったので安心した。

 しばらく走って、左手に看板が見えてくる。看板には「VISITORS BY APPOINTMENT」としっかり書かれており、彼女も「アポイントメントオンリーみたいだよ?どうする?」と訊ねてくれたけど「とりあえず行ってみるよ」と答えて、お礼を言って中へ。


(無事到着。後ろのタンク車も色んな蒸留所で見かけたな)

 さて。ホントは一気に蒸留所見学まで記そうかと思っていたのですが、トミントールではちょっと面白い経験なんかもできたりして、やたら文章が長くなってしまいそうなので、とりあえずここまで。次回は「トミントール蒸留所、見学編」をお送りいたします。

#Tomintoul

この記事を書いた人