2012年、春。
ロンドンオリンピックを3ヶ月後に控えた4月の頭に、バックパック一つ肩から下げて、26歳の私は成田を発った。海外に行くのも初めてなら、一人旅も初めて。英語も喋れなければ、お金も無い。「どうにかなるだろう」という楽観的な考えと「どうにでもなってしまえ」という投げ遣りな考えが交互に明滅する頭の中でも、蒸留所巡りへの期待感だけはぶれること無く、そいつで胸はぱんぱんに膨らんでおりました。
これは「おいしいお酒を飲みたい。その現場に触れたい」ただ、その目的の為だけに地球の裏側まで赴き、旅して来た3ヶ月間の日記です。
北海道よりも小さいくらいの面積しかないスコットランドの土地に、100を超えるウイスキー蒸留所がある。そう考えると、なんだかとても密集していて、蒸留所巡りも困難ではないようにも思えます。実際に、レンタカーを使えば3日もあれば一周できてしまうでしょう。しかし、如何せん酒を飲む旅。レンタカーという移動手段を捨てねばならなくなった時、この小さな国に散らばる蒸留所を巡るのは、途端に困難になります。バスや鉄道などのインフラが隅々までいき渡っているかと言うと、そんなことは決して無く、ましてや蒸留所なんてのは辺鄙な場所に建っているのが常だからです。
いつかスコットランドに蒸留所巡りに行ってみたい——
そう思っている方へのガイド代わり、とまではいかないまでも、なんらかの助けになるような日記となれば幸いです。